なべやかんの「コレクターという病」自宅の秘蔵コレクション披露「買わないと不安で」

北村 泰介 北村 泰介

 収集家は常に次の獲物を追い続ける宿命を背負う。芸能界きってのコレクターであるタレント・なべやかんの場合はどうか?小学生時代から50歳の今まで集めたソフトビニール (ソフビ)人形、国内外の映画やドラマの小道具に至るまで、膨大なコレクションを収めた自宅を訪ね、その成果を拝見しながら、本人が「病(やまい)」と呼ぶコレクターの「業(ごう)」や「あるある」現象を聞いた。

 都内の閑静な住宅街にある一軒家にはコレクションを収めた4部屋がある。まず、メインとなる2階の10畳弱の部屋にお邪魔した。

 東宝のゴジラシリーズ、円谷プロのウルトラシリーズなどのソフビ人形が棚にぎっしり詰め込まれている。「地震でも一切倒れないです。奥に2本足の人形を張り付け、尻尾のあるものは知恵の輪のように組み合わせ、四つんばいの怪獣は上の隙間に差し込む」。棚の1枠に約50体あり、計12枠で約600体。さらに別の場所に保管しているものが「倍くらいある」とのことで、ソフビだけでも1000体以上あると推測される。

 「集め始めたのは小学5年生だった1981年頃。ガンダムのブームで、ガンプラの改造法とかを雑誌で読んでいたらメカゴジラが出ていて『かっこいいな』と思ったのがきっかけです。その時、欲しかったメカゴジラは店に売ってなくて、先にゴジラを買い、次にキングギドラとかラドンとか買って増えていった。それが『地獄』の始まりですね」

 マニアのイベントなどに足を運び、買ったり、交換したり。なぜ集めるのかと問うと「使命感」だという。「今のハリウッド版やアニメのゴジラはカッコ悪いんですけど、ゴジラと名がつくからには集めなきゃいけない。泣きながら買ってますね。ゴジラだからしょうがない(笑)。まさに病気ですよ。手に入れて収納したら安心して終わり。買わないと不安で、新しく出ると買わざるを得ない。きりがないです」。コレクターである自身を客観視する。

 映画やドラマのグッズも多種多様。「悪魔コーナー」には「エクソシスト」「ヘルレイザー」「悪魔のいけにえ」などに登場するキャラの頭。棚の上では大映の「大魔神」がにらみをきかす。「チャーリーとチョコレート工場」の板チョコのレプリカ、モスラの目、ジョーズの歯、必殺シリーズで三田村邦彦が使った「かんざしの武器の本物」、東宝の撮影所から巡り巡った唯一現存する昭和ゴジラの頭部、植木等さんがクレージーキャッツ映画の劇中で使った名刺、父なべおさみが主演した東宝映画「夕日くん」シリーズの劇中名刺、ビートたけしが米映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」で着た衣装やツービート時代の舞台衣装、サザンオールスターズが30周年公演で着た宇宙服とヘルメット…。貴重な原画や絵コンテなど紙資料、レアな漫画雑誌は目の届かないところに収める。

 この部屋から梯子段を上って屋根裏部屋に行くと、バットマン、ジェイソン、フレディといった米映画キャラや、仮面ライダー1号、ライオン丸など日本の70年代初頭からの特撮ヒーローの頭部、ゴレンジャーやショッカーなどの本物のベルトがぶら下がり、室内にはゴムの匂いが漂う。また、1階の二間にはダースベイダーなど等身大の人形からミニサイズの怪獣ソフビまである。

 「好きなものばかり集めた部屋はパワースポットであり、『番町皿屋敷』みたいな感じで『1枚、2枚、3枚…、あっ、あれがない』というストレスと怨念もある。最初は楽しいですが、ゴールが見えてきて、あと少しだけ残っているものが超高い。古いゴジラの漫画だと、残すところは昭和30年くらいの貸本時代のハードカバーで1冊15万円とか。それを8冊くらいそろえなきゃいけないので大変です」

 こぼれ話を1つ。おもちゃが勝手に動き出す米映画「トイ・ストーリー」を連想させる現象が起きるという。「僕は『トイ・ストーリー現象』と言ってますが、置いていたものがなくなり、あらゆるところを探してもなくて、しょうがないから買い直して、その場所に置こうとしたらあったりする。えっ?ここ何回も見たよ…という所に。不思議です。その間だけ、どこかに遊びにでも行っていたとしか思えない。コレクターの『あるある』です」

 収集する原点は「かっこいい」にあるという。「鉄人28号と鉄腕アトムのどちらが好きかと聞くと、女性はアトムの方が多く、男性は圧倒的に鉄人。アトムが好きな理由は『心があるから』。アトムには感情があるけど、鉄人は空っぽ。それでも男の子は鉄人が『かっこいい』から好きなんです」。その価値観は全てのコレクションにつながる。

 「なべやかんの怪獣コレクター生態学 コレクターという病」(彩流社)という著書を9年前に出版した。「その後、自分の本を通販サイトで買った時、『難あり』ということで10円くらいだったんですが、送られてきた本を見ると、その『難』というのは僕のサインでした」。最後は芸人としてオチを付けた。

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