マツコが認めたエアコン愛をイラストで表現、真魚「ファンをいつまでも眺めていられる」

山本 鋼平 山本 鋼平

 イラストレーターの真魚さんは、あふれるエアコン愛を作品に込めてツイッターで公開している。2018年には人気テレビ番組「マツコの知らない世界」に出演。室外機をテーマにトークを展開し、イラストとともにマツコ・デラックスから呆れられるほど感心された。作品を支える情熱と知識。その原点と魅力について聞いた。

 作画活動の他に、鍼灸院の事務などで生計を立てる真魚さんは都内在住で現在42歳。幼少期に換気扇のプロペラに興味を抱いたことが原点だという。ほどなく船舶のスクリューやジェットエンジンに没頭していく中、自宅の空調機器に目を向けた。

 「室外機は現在のようにたくさん目に留まるわけではなく、換気扇の変種という感覚で意識していました。当時は珍しかった暖房機能を兼ねたエアコンが自宅にありましたが、母はその能力不足を嫌い、ガスファンヒーターを使っていました。今思えば、エアコンの進歩の歴史をリアルタイムで経験していたということになるのです。間もなく自宅が建て替わり、東京ガスのセントラルヒーティングが導入され、小中学時代はその仕組みを観察していました。時同じく、フロンガスによるオゾン層破壊が問題となり、空調機について一層興味を深めていったわけです。中学1、2年生の頃はエアコンを作ろうとしていました。これは2001年に電子冷蔵庫を自作して一定の形になりました。例えば高温は、火を起こして燃料をくべればよいのです。しかし、結露のツユが滴り落ちるかのごとし冷たさを、人為的に、任意の特定部所において作り出す、というのは大変な未知と感動がありました」

  エアコンの歴史的な特色を問うと、19年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が言及して話題になった『ロウソクの科学』の著者、マイケル・ファラデーを挙げて説明した。

 「彼は講演で、常にロウソクに立ちかえる実験をしながら科学を語りました。ロウソクと同様に、エアコンは熱力学をはじめ冶金、化学、電気(電子、動力)、流体、果ては医学や貿易に至るまで、世の中を支えている科学や原理と無数の接点があり、それぞれの世界を広く垣間見る事ができるのが魅力と感じています」

 室外機の主役ともいえるファン、つまり送風機が最も好きなエアコンの部位だという。

「室外機を換気扇の変種だと思って好んでいたほどですから、いつまでも眺めていられるほど大好きです。今でも。特に現代のファンは、21世紀に入った頃からジェットエンジンの進歩の影響を受け、一般製品まで急速に進歩しています。しかも日進月歩で変化し続けていますので、とても見応えがあるのです」

 物心つく前から好きだった描画では、最初に熱中した画題は潜水艦。世界的工業デザイナーであるルイジ・コラーニの作品集や、宮崎駿による『天空の城ラピュタ』に登場する膨大なプロペラにも影響を受けた。中学校に進学するとデビッド・マコーレイ『道具と機械の本』に魅了され、独学で絵と造形処理を磨いていった。1997年からネット上でイラストなどを発表してきたが、反響は乏しかった。転機は2017年。当たり前に好き過ぎて公開用の画題として気づかなかったエアコン、室外機を取り上げたところ、注目度が急上昇。翌年に前述のテレビ出演を果たし、プロとしてイラストを受注することにもつながった。

 宇宙時代への突入が確実な近未来。真魚さんは「そこで大変重要なのがエアコンです。生命維持装置ともいいます」とさらなる発展を期待する。その一方、若かりし頃に家電量販店でテレビを担当していたことに触れ「機会があればエアコンを専門に再び経験したい気持ちもあります」と話した。壮大さと通俗さを入り混ぜながら、エアコンが人生を彩っていく。

 

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