世界的にサステナブル(持続可能)な社会形成が目標とされている昨今、ファッションブランド・coxco(ココ)は、高品質だが倉庫に眠ることになってしまう「サンプル生地」を活用し、課題の解決を目指している。同ブランドの運営会社代表の西側愛弓氏は「うちはなんちゃってじゃないというか、素材も労働も、背景に透明性を持ってやっているのが強み」とサステナブルファッションへの思いを語った。
「倉庫に行ったら胸が苦しくなるくらいザーって(大量の生地が)あって。かつ、めっちゃいい生地だったんですね。それで何かできないかなと思って、この取り組みを始めました」。西側氏は生地が保管される様子を見た衝撃をこう振り返った。この光景が商品化の原点だ。
サンプル生地とは服の製作過程で作られる見本用の布で、色落ちや耐久性の確認に使われる。一般的には同生地を元にコストや物性の調整を重ね、別途、量産用の生地を生産する。繊維商社の株式会社ヤギによると、最少でも約30~40メートルのサンプル生地が一度に作られ、そのうち少量のみがスワッチ(生地見本)や見本服に使用されるという。20メートル以上が残るが、大量生産には不向きな量。行き場がないまま倉庫に保管され、自動車のウエス(汚れを拭き取る布)など産業用に使われたり、細かく裁断されリサイクルされたりする。同社・エシカル推進グループの担当者は「サンプル生地の方が量産のものよりクオリティーが高い場合がほとんど。それを活用しないのはもったいないなと思っていたので、服としてよみがえるのはすごく良い取り組みだと思います」と語った。
西側氏は「(少量の服を作るのは)生産効率が悪くなり、コストもかかるのでどこもやりたがらない(笑)。大きい企業さんがやらなかったことを、小さな会社・ブランドだからこそできる取り組みかなと思って」とプロジェクト開始の理由を明かした。
さらに、coxcoでは製品の「生地担当」「パタンナー」「縫製担当」をプロフィル付きで紹介し、生産過程を明示。「お野菜とかって、どこで誰が作ったって最近は分かるじゃないですか。服もお野菜みたいに(生産者が)分かることによってより愛着が湧くかなと」と話した。
日本では販売されているほとんどの服にトレーサビリティ(追跡可能性)がなく、生産者はほぼ分からない。ヤギの担当者は「一番の原因は生地も製品も日本で作らなくなってしまっていること」と話す。日本で流通する衣料品の約98%が国外生産とも言われる。低価格化が続くことで生産地が開発途上国に移り、トレーサビリティがなくなる。児童労働につながる側面もある。「マイナスのスパイラルが起きている」。生産過程だけでなく、輸送時には温室効果ガスが排出されたり、梱包材が使われたりと「いろんな無駄」が生まれる。「服も食べ物と一緒で、消費する場所の近くで作るのが一番効率的だと思うんです。日本の生地で、日本で作って、日本で売る、というのがトレーサビリティも分かりやすくサステナブルな取り組みだと思います」と訴えた。
近年、日本でも「サステナブル」という言葉が広く浸透した。流行を意識し、サステナビリティに配慮した素材をごく一部に使用することで「サステナブルブランド」とする事業者もいるという。西側氏は「うちはなんちゃってじゃないというか、素材も労働も背景も全部、透明性を持ってやっているのが強み。ブレずにやっていくことで、より多くの人に伝えていけたらと思います」と語った。
今シリーズの商品ラインナップはワンピース(生地4種)、シャツ(生地6種、2サイズ)の2種類。大量生産に向かない生地の特性上、各アイテムは4点~約30点ずつのみ製作された。