小さなイベントホールの楽屋で、女性マジシャンの死体が発見された。手品で使うロープが首に巻きついていて、絞殺であることは明らかだった。現場についた加茂警部に、部下の根木刑事がさっそく報告を始める。
「被害者は、手品師の椎葉藍子。今日の夜、ここで手品ショーをする予定でした。楽屋に1人でいるところを襲われたようです」
「楽屋に出入りした人物は?」
「3人います。マネジャーの林田佐世、モノマネ芸人の山川小弓、それと友人の杉谷由香が、楽屋に行ったと言っています」 「全員、女性か。よし、会ってみよう」
◆林田佐世の証言「買物を言いつけられ、楽屋から外に出てました。人使いが荒くて、マネージャーというより奴隷みたいな扱いをされてました…」
◆山川小弓の証言「私は、前座でモノマネ芸を披露する予定でした。彼女に借金をしていて返済を迫られてましたが、それで殺したりはしませんよ」
◆杉谷由香の証言「高校時代の友人で、普通のOLです。公演すると聞いて訪ねてきました。彼女に恋人を奪われ恨みましたが、もう仲直りしてます」
証言を聞き終えた加茂警部のところへ、別の刑事が、勢い込んでやってきた。 「警部。新たな証拠品が見つかりました」。刑事は、手に小さな機械を持っていた。 「ボイスレコーダーという小型の録音機です。椎葉藍子はこれを使って、手品のアイデアとかを音声でメモしていたそうです。これに殺害直前と思われる音声が入ってます!」
刑事は再生ボタンを押した。(イラスト参照) 録音内容を聞き終え、根木刑事が言った。「挨拶しながら入ってきた女性が犯人ですね。声紋分析すれば、すぐに誰かわかります」
「いや、声紋を調べるまでもないよ。犯人は間違いなく、あの女だ」
さて、警部が指摘する犯人と、その推理の根拠は?