注目を集めた「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の来場御礼舞台挨拶(3月28日、東京・新宿バルト9)、集結した14人の声優陣で、独特の存在感を示した男がいる。多摩ヒデキを演じた勝杏里だ。
新劇場版の第3作『Q』(2012年)で初登場する多摩ヒデキは、決して物語で重要な役割を担う訳ではない。14人が演じたキャラクターの中では、最も地味だといえるだろう。そのような中、勝自身は過去の個人ブログによると1977年生まれ。旧作を10代後半で鑑賞して影響を受け、現在は声優を仕事にしている。リアルタイムな旧作の受け手から、新作の送り手に移ったという点では、壇上で唯一の立ち位置だった。
勝は今作の鑑賞時を「すごく涙が出て、金縛りのように動けない状態になりました」と回想。その上で「10代でテレビシリーズに触れて、業界に入る前からファンでした。作品に携わることができ、さらにそれが最後を迎えたという事が…すごく大きな感情が出てきました」と、他の13人とは異なる立場からの深い思い入れを口にした。
勝は成人後に携帯電話やインターネットが急速に発展を遂げ、就職氷河期など日本経済の減速を体感してきた世代。驚き、興奮し、そして言葉を失った旧作のエヴァブームを支えた同世代の者に、共感を呼ぶ言葉だったのではないだろうか。
同様に『Q』で初登場した北上ミドリを演じた伊瀬茉莉也は、勝より10歳ほど年少。こちらはリアルタイムでは、旧作から強い影響を受けていない唯一の立場だった。
なお、勝は伊瀬と2人で『Q』完成パーティーの司会を務めたという。「吐きそうになるくらい緊張して、マイクが震えるくらいでした」と苦笑交じりに回想。震えるほどの緊張を通り越して到達した完結。勝の〝エヴァ後〟における、さらなる活躍が楽しみだ。