歌手のニック・ケイヴ(63)は、自身の葬儀ではエルヴィス・プレスリーの音楽をかけてもらいたいのだそうだ。父親の葬儀をエルヴィスをテーマにして行ったというファンから、自身の葬儀ではどの曲をかけて欲しいかと聞かれたニックは、エルヴィスの1970年のヒット曲『雨のケンタッキー』と答えている。
ニックのウェブサイト「ザ・レッド・ハンド・ファイルズ」に「私達は白のジャンプスーツこそ着ませんでしたが、父の棺桶にエルヴィスの写真と歌詞を入れて、エルヴィスの歌で見送りました。『ザ・レッド・ハンド・ファイルズ』で誰かこのことを質問したかわかりませんが、あなた自身のお葬式ではどの曲をかけて欲しいですか?」とそのファンが書き込んだのに感動したニックは次のように答えた。
「あなたの手紙に感動したよ。あなたのお父さんもエルヴィスがテーマの葬式でとても嬉しかったと思うよ。考えてみたんだけど、僕も彼の1曲をかけてもらえればとても嬉しいと思う。偉大なるロックンローラーの声で次なる世界へと送られることがね。『雨のケンタッキー』だ。それが僕が流して欲しい曲。『雨のケンタッキー』そして、天国の天使達が見守る中、エルヴィスのゴスペル曲『偉大なるかな神』。お父さんにとても良いことをしたね。素晴らしいことだと思うよ」
一方でニックは以前、息子の死について「極端に独占的」であったと同ウェブサイトで認めていた。
ザ・バッド・シーズのフロントマンであった息子のアーサーは、2015年に家族の暮らすブライトンの家の近くの崖から転落し重傷を負いわずか15歳で他界。ニックと妻スージー・ビックは当初、この悲劇が自分達が暮らす地域の人々にも影響を与えていたことにうまく向き合えずにいたそうだ。
2019年に、自身の母親が殺されたハナという名前のファンから、悲しみの乗り越え方についてアドバイスを求められたニックは、こう答えている。「僕の息子の死という悲劇は、僕達が住み、彼が死んだ町の共同体意識の中に刻みこまれている。彼の死は僕達みんなに影響を与えたから、その現実を町そのものと共有しなければならなかった。アーサーの意味をなさない事故死のニュースを聞き、恐怖で青ざめ、いつもより強く子供を抱きしめなかった母親はブライトンには一人もいないと思う。でも、アーサーは僕達の子供であり、僕達の血肉だった。スージーと僕は彼を誰とも共有したくなかったし、彼の不在に対して極端に独占的だった」
しかし次第に夫妻は、アーサーが広くコミュニティから追悼されており、自身やスージーと同じ気持ちを抱いていることを理解するに至ったという。「彼は僕達に属すると同時に、世界にも属していたという事を理解するのにしばらく時間がかかったよ。僕達はアーサーの思い出の最終的な管理人だけど、本当に沢山の人々が追悼し、僕達と同じようにその事件の残酷さと無作為性に憤りを感じていた事実を、やっと理解出来た。スージーと僕は、個人としても2人一緒でも、アーサーに寄り添い、そして彼を大勢の人々と共有するすべを見つけなければならかった」
そして最終的に2人は、「必要不可欠で、これからも続いていく」対話を息子とするための自分達の場所を見つけることが出来たのだそうだ。