ペッパースプレーを装備した「戦場仕様」のドローンが、全米の学校に導入されつつある。警察の到着前に大量殺傷事件を阻止する新たな試みで、ウクライナ戦場での技術に着想を得た同システムに対し現場の期待が高まる一方で、予防策を重視すべきだとする批判の声も上がっている。
プラスチック製のこのドローンは、教員が警報を発すると即座に作動する仕組みで、廊下を猛スピードで駆け抜け、必要に応じて窓を突き破り、最短15秒で容疑者に到達する。
開発を手がけたテキサス州オースティンの企業「キャンパス・ガーディアン・エンジェル」によると、ドローンには攻撃者を混乱させ注意をそらすためのペッパースプレー発射装置、点滅するストロボライト、耳をつんざくようなサイレンが装備されているという。
また、数千マイル離れた場所からの遠隔操作により、時速50マイル(約80km)の速度で標的に体当たりすることも可能だ。内蔵スピーカーを通じて、オペレーターが緊急時に銃撃容疑者と直接対話したり、教員や学校職員に指示を出したりできる。
同社のウェブサイトによると、その目的は「3〜4波のドローンを展開し、公認の対応要員が銃撃犯を拘束できるまで、犯人の注意を引きつけておくこと」にあるといい、各ドローンは1回の充電で約8分間飛行し続ける仕様となっている。
この技術はすでに導入が進んでおり、ジョージア州の少なくとも4校、フロリダ州の3校、コロラド州の1校で準備が進められている。フロリダ州のデルトナ高校では、新学期が始まる前に39機のドローンを配備する計画だ。
共同創業者のビル・キング氏は、ウクライナ戦争で小型戦闘用ドローンの有効性を目の当たりにしたことが開発のきっかけだったとして、「一度ドローンを相手に向けさえすれば、逃げ切ることは不可能だ」と自信を見せた。
同社の戦術運用責任者で、元オースティン市警察SWATチームリーダーのクリストフ・オボルスキー氏も、戦場技術が学校銃乱射事件への新たな対処法につながったと語る。「キング氏が、米国で深刻化する学校銃乱射事件に対抗するため、この種のシステムをいかに導入できるか考え始めた」と明かした。
コロラド州ダグラス郡にあるジョン・アダムズ・アカデミーのサラ・キーゼウェッター校長は、「当校はコロラド州で導入を検討している最初の学校かもしれないが、間違いなく最後ではないだろう」と語った。
一方で、この取り組みには慎重な見方もある。2018年にフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件により、14歳の娘ジーナさんを亡くしたトニー・モンタルト氏は、「これらのドローンは常時パトロールしているわけではなく、事態が起きてから現れるだけだ。そこが問題の一部である」と指摘。「事後対応ではなく、発生を防ぐ予防策に焦点を当てるべきだ」と主張している。