「勉強の合間に何をしていますか?」という問いに対し、多くの人は「スマホを見る」「漫画を読む」「仮眠をとる」と答えるだろう。しかし、過酷な受験戦争を勝ち抜いた中田さん(仮名)の答えは一線を画していた。
難関国立大学として知られる大阪大学、さらに同大学院まで修了し、現在は経営者として活躍する中田さんは、長時間机に向かい続けるために、ある独自のスタイルを確立していた。それは「勉強を止めて完全に休む」のではなく、「脳の使う場所を変える」という手法だ。それが一体どのような手法なのか、中田さんに詳しい話を聞いた。
どうやら受験生時代、中田さんも最初はテレビや漫画を休憩に取り入れていたそうだ(以下「」内、中田さん談)。
「勉強に疲れてテレビをつけたら、気づいたらバラエティー番組を1時間丸々見てしまって。『やばい』と焦って机に戻っても、頭の中はタレントのトークでいっぱいで集中できません。漫画も同じで、1巻だけと決めても次が気になって止まらない。僕にとってエンタメで完全に勉強脳をオフにしてしまう休憩は、集中力を取り戻すための助走が長くかかりすぎて非効率だったんです」
この失敗から、中田さんは「勉強のギアは入れたまま、別の科目に切り替える」という発想に至った。
「私は国語や英語が本当に苦手でした。長文読解なんてやっていると、すぐに脳が疲弊してくるのがわかるんです。そんな時はスパッと参考書を閉じて、大好きな数学の問題集を開きます。公式を使って鮮やかに答えが導き出せると、それが快感で最高の気分転換になりました。文系科目で使っていた脳のパーツを休ませて、数学用のパーツで遊んであげる感覚でしたね」
このユニークなリフレッシュ法について、中田さんは自己分析する。
「今から振り返ると、あれは無意識に左脳と右脳を切り替える作業だったのかもしれません。言語を司る国語や英語の勉強で左脳が疲れたら、空間認識能力が求められる数学で右脳を刺激する。だから、同じ勉強なのに頭はスッキリする。脳の別の引き出しを開けることで、一方をクールダウンさせていたんでしょうね」
もちろん、どんな科目でも良いわけではない。中田さん流の「休憩用の科目の選び方」には、いくつかのポイントがあるという。
「前提として、自分が心から好きか得意な科目であること。そして、クイズやパズルを解くような感覚で、短時間で達成感が得られるものがいいですね。僕の場合は数学でしたが、古文の単語クイズや、化学の一問一答なんかでも良いと思います。大事なのは、あくまで休憩なので、難しい問題には絶対に手を出さないこと。問題が解けるという快感を積み重ねて、次の苦手科目に挑むためのエネルギーをチャージするのが目的ですから」
一見ストイックに見えるこの戦略こそ、中田さんが長時間学習を継続できた秘訣だった。
「結局、自分にとって何が1番のご褒美になるかを知ることが重要なんです。僕の場合はそれがたまたま数学だった。常識的な休憩が合わないなら、自分でルールを作ってしまえばいい。脳をだましながら、いかに自分を気持ちよく机に向かわせ続けるか。そのゲームを制した者が受験も制するんだと思います」
常識外れのご褒美学習。それもまた彼が、合格という結果を掴むために編み出した緻密なセルフマネジメント術だったのだろう。
◆中田剛士(なかた・たけし:仮名) 大阪大学大学院工学研究科修了後、機械メーカーに就職。その後、IT企業に転職後独立・起業。現在は、大阪府内でコミュニケーションツールに関わる会社を運営している。