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ホテルのタオルって持ち帰ったらダメ?→アメニティの“窃盗”と“サービス”の境界線とは【弁護士が解説】

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家族旅行で、少し贅沢なホテルを訪れると、ふかふかのタオルに感激し、持ち帰りたくなるものだ。高い宿泊費を支払っているのだから、タオルくらいサービスのうちだと考える人もいるかもしれない。では実際に、ホテルのタオルなどのアメニティは、持ち帰っても問題ないのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。

ーホテルの備品を持ち帰る行為は、法的に「窃盗罪」にあたるのでしょうか

ホテル側が持ち帰りを許可していない備品を無断で持ち帰る行為は、刑法第235条の「窃盗罪」に該当する可能性があります。ホテルの客室にある備品は、宿泊客が滞在中に使用するために貸し出されているものであり、所有権はホテルにあるからです。そのため、許可なく持ち去ることは他人の財物を窃取したとみなされ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があるのです。

もちろん、ホテル側が「どうぞお持ち帰りください」と提供しているものや、明らかに記念品として用意されているものについては、この限りではありません。しかし、「宿泊費を払っているのだから」という自己判断で備品を持ち去ることは、法的に許される行為ではありません。

ー持ち帰って良いものとダメなものの一般的な境界線はどこですか

一般的に、「消耗品」か「非消耗品(備品)」かで判断できます。例えば、歯ブラシ、ヘアブラシ、カミソリ、シャワーキャップなどの使い捨て衛生用品や、個包装のシャンプー、リンス、ボディソープ、石鹸が該当します。

また、一杯分のインスタントコーヒーやお茶のパックや使い捨てのスリッパも、問題にはならないでしょう。これらは一度使用されると衛生上の観点から再利用が難しく、宿泊料金に含まれるサービスの一部と考えられているため、持ち帰っても問題ありません。

一方で、タオル、バスローブといった繰り返し使用するものや、ドライヤー、電気ケトルなどの電化製品は持ち帰ってはいけません。特に、タオルなどは一見消耗品のように思えるかもしれませんが、クリーニングして次の宿泊客のために再利用されるため、持ち帰ることはできません。

ーなぜ、このような違いが生まれるのですか

持ち帰りが許可されているアメニティ類は、基本的に「使い切り」を前提とした消耗品です。これらは宿泊客一人ひとりの衛生を保つために提供されており、一度使用されたものは再利用が困難です。そのため、ホテル側も宿泊客が持ち帰ることを想定し、その費用を宿泊料金に含んでいます。

ーもし、持ち帰りが発覚した場合、ホテル側はどのような対応を取れますか

ホテル側は、備品の持ち帰りが発覚した場合、いくつかの対応を取ることができます。まずは、宿泊客に連絡を取り、備品の返還を求めるのが一般的です。誤って持ち帰ってしまった場合は、速やかにホテルに連絡し、謝罪の上で返送するなどの対応をすれば、大きなトラブルに発展することは少ないでしょう。

しかし、連絡が取れなかったり、悪質だと判断されたりした場合には、備品の代金を請求される可能性があります。さらに、被害額が大きい、あるいは常習的であるなど、特に悪質なケースでは、警察に被害届を提出し、窃盗罪として刑事事件に発展する可能性も否定できません。

近年では、テレビや空気清浄機、高級ドライヤーといった高価な備品が盗まれるケースも報告されています。ホテル側もこうした被害には毅然とした対応を取る傾向にあり、「少し拝借するだけ」という軽い気持ちが、思わぬ大事につながる可能性があることを肝に銘じておくべきでしょう。

●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 

大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。

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