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【中学受験】受験生の親が読むべき本とは?受験コーナーに置いてないけれど…たどり着いた意外な1冊

受験

野田 茜 野田 茜

 書店の「中学受験コーナー」には、参考書や問題集に加え、「親がどうかかわればよいか」といった親向けの指南書も数多く並んでいる。不安が強いほど、その中にヒントがある気がして、つい手に取ってしまう。しかし、たくさん読めば読むほど「どれが正解なのだろう」と迷いが深まることも少なくない。

 筆者も長男(現在高校1年生)の中学受験期から何十冊とそうした本を読んできた。その中でもっとも心に残り、いまもなお「これは親にとって必要な考え方だ」と思える本がある。それは、実は中学受験の本ではない。アドラー心理学を対話形式で分かりやすく紹介したベストセラー『嫌われる勇気』である。

 『嫌われる勇気』は、子育て本でもなければ、もちろん受験本でもない。だが、この本の中にある「課題の分離」という考え方は、受験期の親にこそ必要だと感じている。

 親は子どもに働きかけることができる。問題集を買い与えたり、スケジュールを作成したり、環境を整えたり。しかし、それをどう受けとめてどう行動するかは、子ども自身が決める。そして、その行動の結果は子ども自身が引き受けることしかできない。要するに「課題の分離」とは、行動の結果を引き受けるのが誰なのかを基準に課題を切り分け、相手の課題には立ち入らず、自分にできることに集中する考え方である。

 ただ、相手が子どもとなると、親はつい課題に踏み込みがちだ。たとえば、算数の問題を子どもに理解させることは強制できなくても、叱ったり、ご褒美で誘ったりして、机に一定時間座らせることはできてしまう。けれど、そうやって子どもの課題に踏み込むと、親子ともに苦しくなり、場合によっては「教育虐待」と呼ばれる領域に近づいてしまうおそれがある。

 中学受験は長期戦である。親の焦りや不安が子どもに伝われば、かえって学びの意欲を削いでしまう。そんなとき、『嫌われる勇気』の「課題の分離」を思い出すと、肩の力が抜ける。「これは子どもの課題。私は私にできることをすればいい」そう整理できるだけで、親自身の心が軽くなる。

 中学受験本は数多くあるが、ときに受験コーナーを離れてみることも有効だ。心理学や哲学の本には、長い受験期間を支えるヒントが隠されている。子どもが思うように動かないとき、親が苦しくなったとき、「どうして子どもは…」と問いかけるのではなく、「どうして私はそう感じるのか」と自分の内面を見つめ直してみる。その視点を与えてくれる1冊として、『嫌われる勇気』を、受験生の親にぜひすすめたい。

<プロフィール>

野田 茜

 2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。

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