こんにちは!アップ教育企画・進学館の齋藤と申します。
夏の風物詩である高校野球(正式名称は「全国高等学校野球選手権大会」だそうです。高校球児でしたが存じ上げませんでしたし、覚えられません)が大詰め。球児たちの聖地・甲子園球場のある西宮市では、白球を追いかける浅黒い若者に負けず劣らずの熱い夏を過ごす小学生たちが今日も元気にシャーペンを握って問題に打ち込んでいます。
受験生ともなれば1週間のほとんどが通塾で埋まります。入試問題のレベルの高さを鑑みるとなかなか休ませられないのが実情ですが、「中学受験勉強の正常化」を目指す私たちは何とか小6も週2日の休みを確保してカリキュラムを策定しております。ただ、お休みの日であっても家庭学習に邁進していただくことを思うと、休むことが完全に正解だとは言い切れません。よって、休日を利用して自由選択でご参加いただける企画をさまざま考えており、そのひとつがいわゆる「勉強合宿」と呼ばれるものです。
高校球児の憧れであるプロ野球選手は皆、シーズン開幕前に合宿(=キャンプ)にて徹底的に鍛え、長期間の戦いに備えます。集中的に固めて学習する、いわゆる「勉強漬け」になることはやはり効果あり。解けなかった問題ができるようになる、定着しなかった暗記事項が頭に入る、などさまざまなメリットが考えられます。多くの塾(と言っても最盛期と比較すれば明らかに減少しています)が、短期集中で子どもたちをパワーアップさせたいという願いのもと、生徒、保護者さま、そしてスタッフ、全員の体力の残量をいとわず合宿を企画するのにはこのような背景があります。
たくさん勉強する子どもたちはもちろん、送迎や食事の準備でご負担をかける保護者さまにも、得られるものがある非日常タイムを過ごしてほしい。そんな願いを込めた本年度の企画名は「日帰り勉強合宿~禅体験とともに~」。その名の通り、勉強と座禅をミックスした一日。テストで日頃磨いた力を遺憾なく発揮するためには、高校野球みたく「よし、やるぞー!」とテンションを高めた状態ではなく、心穏やかに粛々と問題に向かうことが必要です。ただ、気持ちの整え方がうまくいかず、試験中に不安に襲われ問題に集中できず、悔いの残る試験になってしまう方がいるのも事実。そんな不安を少しでも取り除き、「あとはやるだけ」という境地で最終ステージに立たせたい、そんな思いが「禅の精神」を体験していただくことにつながりました。
まず、京都の花園中学高等学校の施設をお借りして座禅の手ほどきを受けました。同校は「スーパーグローバル ZEN コース」の設置がある、教員の中に臨済宗の現役のお坊さまがいらっしゃる、講堂が座禅スペースでもあり毎日がそこからスタートする、など禅の精神を教育の中にふんだんに取り入れている注目校です。生徒も講師も保護者さまもみな、靴も靴下も脱いで座禅を組み、時には警策(きょうさく・けいさく)と呼ばれる「例の棒」で打っていただいたり(※希望者だけ)。姿勢を正して呼吸を整えて、さあ、頑張りましょうか、ということで、その後は勉強タイム。座禅を経た講師陣の授業は、気のせいかいつもの熱血大盛を抑えた穏やかなものであったように感じました。
そして夕方、花園中学に隣接する大本山妙心寺の塔頭寺院のひとつ、退蔵院に移動して締めの座禅および法話の拝聴となりました。日経ビジネス誌「次代を創る100人」にも選出された松山大耕副住職さまより、またとないお話を伺えたことは生徒保護者さまのみならず、自分自身にとっても貴重そのもの。満足度の高い一日だったのでは、と思っております。
当合宿を企画するうえで、古くからの友人(宗派が違うお坊さん)に、「仏教における座禅は人間的な目的をもってやるものではないよ」と助言を受けておりました。たしかに生徒に有形のもの与えられたわけではなく、期待すべきでもないのでしょう。ただ、努力の量に比例して押し寄せるともいえる「言い知れぬ不安」に対し、若者たちが背筋伸ばして深呼吸して、粛々と立ち向かい乗り越えてくれることだけは、厚かましくも願わせていただきます。
夏も大詰め。甲子園も準々決勝がスタートしています。燃える思いは球児も受験生も同じ。大人チームで子どもたちを励まし、努力した人だけが挑める「言い知れぬ不安に立ち向かうステージ」にあがってもらいましょうね!