小学生が挑戦する中学受験では、親の関与が欠かせない。親子で話し合い、支え合いながら進む一方で、ときには勉強のやり方や進捗をめぐって口論になることもある。「受験期は親子バトルの連続」という声も少なくない。
そんな中、筆者の家庭では中学受験をめぐる親子の喧嘩はほとんど起こってこなかった。2022年に長男(現在高校1年生)が塾なしで中学受験を終え、現在は次男(小5)が通信教材で受験勉強を進めているが、受験に関して言い争いになることは稀だ。その理由を振り返ってみると、大きく2つあることが分かった。
まずひとつは、「親の希望と子どもの実態との乖離がほとんどない」ことだ。これは、子どもが親の理想通りに動いているということではなく、そもそも親の側に「こうしてほしい」という具体的な希望が、ほとんどないからである。
もちろん、経済的に無理のある学校は避けてほしいという願いはある。ただそれ以外については、中学受験をやる・やらないを含め、どのように取り組むか、本人の気持ちやペースに任せている。「せっかくなら少しでも上を目指してほしい」とか、「受験生ならもっと頑張るべき」といった気持ちも、持っていない。
親の中に「こうすべき」「こうであってほしい」という思いが強いと、子どもがそのとおりに動かないときにイライラが募る。そのズレが大きければ大きいほど、衝突につながるのだと思う。最初から「任せる」という立場でいると、そもそもバトルの火種が生まれにくい。
もうひとつは、「親子で共通認識をもち、ずれたときに軌道修正している」こと。
たとえば、「どんな受験にしたいか」「どんな状態を目指すか」といった受験の方向性を、定期的に子どもと話し合い、共通認識を持つようにしている。
子どもの言動と実際の行動にずれが出てきたときには、「今の共通認識は何だったか?」を一緒に確認するようにしている。親の期待を押しつけるのではなく、あくまで話し合いの中で軌道修正していく。共通認識があれば、感情的な対立は生まれにくい。
もちろん、子どもだって人間なので、機嫌が悪い日もあれば、口答えする日もある。けれど、受験を軸にした大きな衝突が少ないのは、こうした「ずれを最小限に抑える仕組み」があるからだと感じている。
ただ、このやり方はあくまで筆者の家庭の一例にすぎない。そもそもこの方法を取るには、子どもと話し合いができる関係性があること、そして子ども自身が話し合いに応じられるタイプであることが前提となる。実際、長男はいつでも素直に話し合いに応じるが、次男はそうでもない。そのため、おやつを食べているときや外出先など、リラックスしているタイミングを選んで話すようにしている。
親子のかたちは家庭ごとに異なる。けんかして乗り越える関係もあるだろう。筆者自身は、父親が怒鳴る家庭で育った経験から、「家庭はまずは穏やかな心で家族が過ごせる場であってほしい」という思いが強くある。それが崩れるのであれば、中学受験は避けたいと思っている。「正解」はないからこそ、自分たちにとって心地よい形を見つけていくことが、何より大切なのだと思う。
<プロフィール>
野田 茜
2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。