新幹線の車内で、大学生のAさんは「自分の席だし静かに喋るくらいなら…」とスマホでライブ配信を開始した。しかし、隣や後ろの席の乗客や乗務員から「顔が映っている」「周囲の迷惑になる」と注意され、すぐに中止することに。
このように公共の移動空間である新幹線内でのライブ配信は、法的なリスクもあるのだろうか。乗客の肖像権やJRの規約、不法行為のリスクについて、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー他人の顔や声が映り込んだ場合、肖像権侵害になりますか?
民法上の肖像権やプライバシー権の侵害(不法行為)に該当する可能性があります。個人が特定できる状態で無断で撮影し、不特定多数が閲覧するライブ配信で公開する行為は、相手方の許許がない限り法的権利の侵害となり得ます。
声であっても個人の会話内容や特徴からプライバシー侵害とみなされることがあります。相手から配信の停止や動画の削除を求められたり、精神的苦痛に対する損害賠償を請求されるリスクが生じるため、他人の無断撮影・配信は厳禁です。
ー新幹線内での撮影・配信は、JRの規約や法律で禁止されていますか?
原則として自由な撮影・配信が全面的に認められているわけではありません。JR各社の運送約款(旅客営業規則)では、他の乗客に迷惑を及ぼす行為や車内秩序を乱す行為が禁止されています。
また、個人の営利活動における駅や列車内などの施設内での各種撮影を制限する案内も出されています。法律上も、鉄道会社の施設管理権に基づき利用ルールが定められており、撮影や配信行為によって周囲の不快感やトラブルを引き起こす場合、運送契約違反や施設利用ルール違反として制止される対象となります。
ー乗務員の注意を無視して配信を続けると、どんな罪に問われますか?
乗務員や駅員の制止を聞かずに配信を続けた場合、鉄道営業法違反(係員の指示に従わず車内秩序を乱す行為)に問われる可能性があります。さらに、乗務員の警告を無視して居座り業務を妨害した場合は威力業務妨害罪(刑法234条)や不退去罪(刑法130条後段)が検討されることもあります。
最悪の場合、次の停車駅で警察への通報や降車(退去)命令が出されるなど、身柄拘束やトラブルに直結するため、乗務員の注意には直ちに従わなければなりません。
ー個室やデッキからの配信なら、法的に問題ありませんか?
個室やデッキであっても法的な問題が完全になくなるわけではありません。新幹線車内は全体が鉄道会社の管理する公共施設であり、デッキであっても通行する他人が映り込むリスクや、声が客室へ漏れて迷惑となるリスクは残ります。
また、鉄道会社が掲げる施設利用規約や撮影制限の対象であることに変わりはありません。周囲に人がいない個室であっても、商業利用の制限や機密保持、車内マナーの観点から問題視されることがあるため、安易な配信は避けるべきです。
●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。