家事や育児に追われてバタバタしている妻。見かねた夫が良かれと思い「何か手伝うよ」と声をかけた瞬間、妻から大激怒されてしまった…。これに対して「善意で言ったのに、なぜキレられるのか分からない」と困惑する夫は少なくないだろう。
夫婦のすれ違いは、言葉に隠された心理や「見えないタスク」への理解不足から生まれる。では、なぜ夫の優しさが怒りに変わってしまうのだろうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞いた。
ーなぜ夫の「手伝うよ」という善意の言葉に妻は激怒してしまうのでしょうか?
「手伝う」という言葉の裏に、夫の「当事者意識のなさ」が透けて見えるからです。この言葉は、「本来は妻がやるべきことだが、自分がやってあげてもいい」というニュアンスを含んでいます。
妻からすれば、家事や育児は2人で担うべきことなのに、夫が明確に「自分のやるべき事ではない」と線引きしているのがバレてしまうためカチンとくるのです。特に忙しい時は悪い方に解釈しがちになるため、善意の言葉であっても余計に怒りを買います。
ー妻が求めている当事者意識とはどのようなものなのでしょうか?
家事や育児は、赤ちゃんが泣き出し、お風呂が溢れそうになり、火にかけているお茶が沸くなど、複数のタスクが同時に発生します。妻はそれらを瞬時に見極め、優先順位をつけて動いています。
そんな時に「手伝うよ」と呑気に言われたり、急ぎではないお風呂のカビ取りなどをゆっくり始められたりすると、「見て分からないの?」と怒りが爆発します。「言われたことしかできない指示待ち人間」にならず、今何が重要かを自分で判断して動けることが、本当の当事者意識なのです。
ー「指示してくれたらやるのに」と思う夫が、自発的に動くコツはなんでしょう?
指示されていない時点で、「戦力として見られていない」と自覚することが大切です。自発的に動くコツは、妻が忙しくて不機嫌な時だけ参加しようとするのではなく、普段の「余裕がある時」に家事を少しずつ積み重ねることです。
たとえば、用を足したついでに10秒だけトイレを拭く、トイレットペーパーを補充するなど、小さな家事を日常的にこなしましょう。また、家事の項目を書き出して可視化し、自分がやるべきタスクを視覚的に把握するのも効果的です。
ー妻の機嫌を伺う「びくびく夫婦生活」から脱却する方法はありますか?
妻が怒っている時、とりあえず機嫌を直そうと対症療法的に謝ったりビクビクしたりするのは逆効果です。妻が怒っている本当の原因は、「家事や育児の大変さを分かってほしい」「頑張りを認めてほしい」という思いにあります。
目の前の「あれができていない」という揉め事から離れ、「本当はどういう生活を送りたいのか」「どんな夫婦関係を築きたいのか」という理想について話し合ってみましょう。妻の気持ちを「教えてほしい」というスタンスで傾聴することが脱却への第一歩です。
◆木下雅子(きのした・まさこ) 行政書士/心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。