飲食店で注文した料理が、後から同じメニューを頼んだ隣席の人たちの元へと先に運ばれてきた。その時、店側に“抗議”の意味も含めて確認すべきか、鷹揚(おうよう)に構えてやり過ごすべきか。その場でキレることなく、寛大に接する心の持ち方について、「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏が提言した。
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【今回のピンチ】
友だちと居酒屋に。自分たちの分の唐揚げが、隣の席に運ばれた。隣がオーダーしたのは、自分たちの後だったのに……。順番を抜かされたことをどう店員に伝えるか?
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隣の席の人たちには、何の罪もありません。注文した唐揚げが運ばれてきただけで、疑問を抱くこともなく、さっそく箸(はし)を伸ばそうとしています。
先にオーダーした自分たちの唐揚げは、どうなってしまったのか。ささいなことですが、いや、ささいなことだけに、どうしたらいいのか激しく悩んでしまいます。日常の平和を切り裂く大ピンチ。友だちとのせっかくの居酒屋タイムを楽しく続けられる、華麗な対処法を考えてみましょう。
最悪なのは、罪のない隣の席の人たちを巻き込むこと。先を越されたことにカチンと来て「その唐揚げはオレたちのだ。横取りするな!」と言ってお皿を取り上げたら、隣の人たちはさぞ面食らうでしょう。面倒なトラブルに発展する可能性も大です。
店員さんに「おい、こっちが先だろ! ちゃんとやれよ!」と激しく抗議するのも、同じぐらい最悪。「申し訳ありません」と謝ってもらっても、気持ちが晴れるわけではありません。さらに、店員さんや周囲の客から「なんだこいつら」という視線を向けられている気配を感じることになるので、楽しく飲む雰囲気ではなくなるでしょう。
順番が前後しようとも、すぐに唐揚げが運ばれてくれば、特に問題はありません。店のちょっとしたミスに過敏に反応して、いちいち腹を立てたり気分を害したりするのは、大人として余裕がなさ過ぎます。
しばらく様子を見て、無事に唐揚げが到着したら「ハハハ、丁寧に作ってもらっちゃったね」ぐらいのことを言って、小さなアクシデントを微笑ましい出来事に変換してしまいましょう。何も言及せずにスルーすると、お互いの心にモヤモヤが残りかねません。
いっこうに運ばれてこない場合は、定番の対処法ですが、店員さんに「唐揚げのオーダー、通ってますか?」と確認します。忘れられていた気配だった場合、それもまた楽し。友だちと「ま、そういうこともあるよね」と笑顔で言い合えば、店のミスをやさしく許せる自分たちの寛大さを実感して、よりおいしくお酒を飲むことができます。
このときに、ムッとした口調で「唐揚げ、どうなってんの!?」と言ったら、せっかくのいい気持ちになるチャンスが台無し。世の中には「偉そうな態度を取っていい場面では、偉そうな態度を取らないと損」と思う人が少なくありません。素直に偉そうな態度を取るほうがよっぽど損ですが、そういう人はなぜ損なのか永遠に理解できないでしょう。
居酒屋にせよ何にせよ、人生にはアクシデントが付きものです。それを不快な出来事にするか、楽しむネタにするかは自分次第。たとえ唐揚げの順番を抜かされても、目を吊り上げたりせず、カラッとした調子でアゲアゲな雰囲気に持っていける粋な大人になりたいものです。唐揚げだけに……。いや、すみません、ちょっとカラ振りでした。