1児の母であるAさんは、子どもが小学1年生になったのをきっかけにスマートフォンを持たせた。自宅で仕事をしているAさんは、子どもが学校から帰ってきてもしばらくは子どもの様子を随時見ることができないのが理由だ。
小学1年生には少し早いかもしれないが、子どもの安全のためにも持たせることを決めた。そんなAさんの想いを無視し、子どもは次第にスマートフォンを使って動画やゲームを楽しみ始める。
やがて子どもは、帰宅するとすぐにスマートフォンを手に取り、食事中やトイレにも持ち込むようになった。Aさんが声をかけても画面から目を離さず、取り上げようとすると、泣いたり怒ったりして抵抗する始末だ。
親子げんかが増えたため、Aさんは後から利用時間を制限しようとした。ところが子どもは「今までは使えたのに」「どうして急にダメなの」と反発。Aさんが「決めた時間を守れなければ使わせない」と告げても納得せず、スマートフォンをめぐるやり取りが家庭の空気を重くしていく。
このような問題でAさんが悩まされるのは、子どもがスマートフォンを使うには幼過ぎたからだろうか。それとも、事前の準備やルール作りが足りなかったからだろうか。また子どものスマホデビューに適切な年齢はあるのだろうか。発達臨床心理学の専門家である長谷川明弘さんに聞いた。
「スマホを持たせてよい時期」の見極め方
―子どもにスマートフォンを持たせる適切な年齢はあるのでしょうか?
「何歳から」という線引きはありません。同じ小学1年生でも発達には個人差があり、持たせる目的や保護者がどこまで見守れるかによっても変わります。テレビやゲームを、決めた時間で切り上げようとする様子が見られるかは、1つの目安になるでしょう。
ただし、低学年の子どもにすべてを自己管理させるのではなく、保護者の声かけや端末の時間制限を前提に考える必要があります。
―低学年に持たせる場合、どのようなルールを事前に決めるべきでしょうか。
少なくとも決めておきたいのは、使う時間帯と長さ、使う場所、使ってよいアプリ、そして守れなかったときの対応です。最後が抜けがちですが、対応を決めていないと、その場の感情で叱るなど、親の対応に一貫性がなくなるおそれがあります。
米国小児科学会は、家庭内で画面を使わない時間や場所を設けることを勧めています。「動画やゲームなどの娯楽利用はリビングだけ」と決めれば、保護者が利用状況を確認しやすく、自室での長時間利用も防ぎやすくなります。
―すでに使いすぎや親子げんかが起きている家庭は、どうルールを見直せばよいでしょうか。
後から利用を制限されると、子どもが反発することは珍しくありません。
親の考えを一方的に押し付けるのではなく、使いすぎだと感じている理由を伝えたうえで、子どもの意見も聞きながら、一緒にルールを話し合いましょう。
守れなかったときも、叱ったり取り上げたりするだけで終わらせず、なぜそうなったのかを一緒に振り返ってみましょう。子どもが自分の行動と結果のつながりに気づき、次はどうすればよいかを考える機会になります。また、子どもが約束を守ってスマートフォンを使用している場合は、その行動を認める声かけを子どもに向けて行って、親子で肯定的な感情が行き来する機会を持つことが子どもの自立する気持ちを促すことに繋がります。
◆長谷川明弘(はせがわ・あきひろ) 帝京大学文学部心理学科 教授 博士(都市科学)/日本催眠医学心理学会理事長、日本心理療法統合学会理事
公認心理師、臨床心理士、指導催眠士、臨床動作士、認定催眠士。専門は臨床心理学、発達臨床心理学、ブリーフセラピー・家族療法など。医療・教育・産業分野で臨床実践を重ね、子どもから高齢者まで、生涯の発達段階に応じた心理支援を研究している。「This is Ikigai 365」ペンギン・ブックスなど多数の著作がある。