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殺生禁止の国・ブータン「ゴキブリが出たらこのチョークで…」ユニークな習慣が話題に

中将 タカノリ 中将 タカノリ

仏教国・ブータンのユニークな習慣がSNS上で大きな注目を集めている。

「殺生禁止の国 ブータン でGが出た時に使うチョーク。Gが出た場所をこのチョークで囲う。Gは殺せないから。チョークで囲うとGは『そこから出られない』という事になっている。」

と紹介したのは法政大学国際文化学部教授の島野智之さん(@freeliving_mite)。

なにやらチベット文字が印字されたチョーク。ブータンの人々は仏教の戒律を重んじ殺生を嫌うがゆえに、ゴキブリが出ても叩き潰したり殺虫剤を使ったりせず、このチョークでおまじないを施すというのだ。

SNSユーザー達から

「綱吉でもいるのかよ。」
「自分ならちょっと気を使ってジッとしてしまう。呪文とかスゴイし!」
「なるほど、ブータンの知恵やな。 殺生禁止の国ならではの“共存するための工夫”って感じやね。」

など数々の驚きの声が寄せられる今回の投稿について島野さんにお話を聞いた。

ーーブータンの方たちも日本人同様にゴキブリを忌避するのでしょうか。

島野:はい、ブータンの方々もゴキブリは嫌いなようです。日本人と同様に「不潔なもの・でてきてほしくないもの」という認識は共通しているようで、特に台所や食品まわりに出ると困るという感覚は万国共通だと感じました。

ただ、仏教の教えにもとづき「殺してはいけない」という制約があるため、その対処法が日本とは大きく異なります。忌避しつつも殺せないという独特のジレンマへの現実的な解決策として「出てこないでね」と言う願いを込めて、このチョークを使うのだと思います。

首都ティンプーは標高2300m前後、気候は東京よりも少し涼しいくらいですからあまりゴキブリもそれほど多くありません。ブータンの面積は九州と同じくらいですが、標高約7500mの高山から標高約90mの亜熱帯地域まで気候はさまざま。このチョークはインドとの国境の亜熱帯地域で多く使われるそうです。

なお、ブータン王国では自然保護が徹底しており、動物や昆虫などの殺傷・捕獲も一般的に厳しく禁じられています。

ーーこの習慣をご覧になった際のご感想は。

島野:初めて見たときは正直「本当に効くのだろうか?」と思いました。しかし、よく考えるとこれはゴキブリを「閉じ込める」という発想であり、殺さずに「存在を管理する」という仏教的な生命観が日常生活に根付いている好例だと感じました。

ブータンの方々はチベット仏教ですが、お祈りの最初には必ず「生きているものがすべて祝福をうけるように」と祈り出すのだそうです。生物多様性や動物との共存を研究・教育する立場から考えてみれば、生き物はすべて約40億年の進化の歴史を平等にたどってきたわけですから、高等な生き物や下等な生き物という言葉は実際には使うべきではありません。生き物との共存について、我々はブータンの人々からそれを教わる立場だと思います。信仰と生活の知恵が生んだ実践的な共存の方法で、害虫を殲滅するだけが答えではないという現代社会へのヒントがあると思います。

ーーご投稿に対し大きな反響がありました。

島野:これほど多くの方に関心を持っていただけるとは思っておらず驚いています。「殺せないから囲う」というロジックに、多くの方が面白さや驚きを感じてくださったようです。これがブータンという国への関心、そして生き物と人間の関係を文化的に考えるきっかけになれば研究者としてとても嬉しく思います。

何人かの方から教えていただいたのですが、このチョークには実際にはピレスロイド系の農薬が練り込んであるのだそうです。僕も驚きました。インドの亜熱帯から熱帯にかけての地域では、アリが家の中にはいってくる列をこのチョークで塞ぐと翌日にはアリが死んでいるそうです。でもゴキブリにはきかないそうです。

ブータンではゴキブリはこのチョークでは死なないことを知っていながら、あえてゴキブリに「この線から出てこないでね」と願いながらチョークを使うのかもしれないなとあらためて理解しました。

◇ ◇

ひところGDP(国内総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を重視することで話題になったブータン。彼らの知恵に学ぶことは多くありそうだ。

なお島野さんは"ゴキブリスト"として知られる竜洋昆虫自然観察公園副館長の柳澤静磨さんらと、2020年に日本で35年ぶりとなるゴキブリ新種の記載に関わっている。ご興味ある方はぜひBUNA「新種ゴキブリ発見への道のり 〜アカボシルリゴキブリとウスオビルリゴキブリ〜」や中日新聞「ゴキブリストに聞く」などの記事をご覧いただきたい。

島野智之さん関連情報

Xアカウント:https://x.com/freeliving_mite

BUNA「新種ゴキブリ発見への道のり 〜アカボシルリゴキブリとウスオビルリゴキブリ〜」:リンク

中日新聞「ゴキブリストに聞く」掲載:リンク

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