世界興行収入のトップに君臨する監督といえばジェームズ・キャメロンだ。
1作目の「アバター」(2009年)は29.237億ドル(約4555億円)という世界興収1位、続編となる「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」(2022年)は23.435億ドル(約3650億円)で第3位、「タイタニック」(1997年)は22.648億ドル(約3527億円)で4位だが、日本での歴代興行収入洋画&実写映画では、第1位を記録している。そんなジェームズ・キャメロン監督が、新作「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」(19日公開)で来日し、筆者も単独インタビューを行った。その際、本人があえて付け足した言葉がキャメロン監督の映画への思いを表現していた。
「この映画は、キャプチャースーツを着て俳優が実際に演じる姿を撮影し、CGに取り込んであの姿に変わる。だからあれだけ大きな目に変化するんだ。生成AIではないよ」
多くのインタビュー記事で書かれているキャメロン監督の生成AIへの反対意見。そこにはやはり、俳優陣や脚本家への敬意があり、人間の創造性を守ろうとする強い意志が見られる。
確かに本作でもベテラン女優であるシガニー・ウィーバーを、この技術により青い肌を保つ先住民ナヴィの若き少女キリへと姿を変えさせることに成功している。もちろん、パート1公開時に観客を驚かせた3Dによる脅威の映像体験はシリーズを増すごとにグレードアップし、本作では、飛行シーンと水中バトル、更には室内での機械とのバトルが展開される。この没入感は彼らの視点から捉えたカメラや、ジャングルを駆け巡るナヴィにピッタリと張り付いたカメラでスピード感が増し、あくまでも3D映像による劇場体験で味わえる興奮だろう。そして今回新たな展開となるのは、先住民ナヴィと人類の戦いに、攻撃的なナヴィのアッシュ族が加わることだ。彼らは人類が手にする最新鋭の武器に魅了され、更に凶暴化を増していく。
実はこの公開タイミングで、映画界にも変化が訪れている。それはNetflixによるワーナー・ブラザース・ディズカバリーの買収というニュースだ。ここにパラマウントが買収案を提示したのだが、ワーナー側はNetflixとの資産買収を選んでいる。これに対してジェームズ・キャメロン監督から不安の声が幾度となく上がっている。それはNetflix映画の17日間という劇場上映期間の短さと配信へのスピードだ。これにより映画館が危機的状況に陥ると嘆くジェームズ・キャメロン監督。映画館上映にこだわり続ける映画製作と、俳優による生の演技を探求する巨匠の未知なる挑戦は、今後も続いていくだろう。