師走の京都を『吉例顔見世興行』が1日、京都南座で開幕した。今回は八代目尾上菊五郎と長男の六代目尾上菊之助の襲名披露公演。菊五郎は映画「国宝」で話題となった女形舞踊の大曲「鷺娘」で圧巻の舞を披露。またそれに先立ち菊之助が、襲名披露狂言となる「玉兎」を届けた。
「玉兎」は「かちかち山」を題材に、大きな月の中から杵を携えて現れた兎は、狸や老爺、老婆など、さまざまな人物を踊り分けた。続く「鷺娘」では厳かな雰囲気の銀世界で、白無垢姿で現れた鷺の精が恋の苦楽、妄執をあでやかに表現し、惜しみない拍手が送られた。
夜の部では「口上」で、片岡仁左衛門の紹介で、菊五郎が「この度尾上菊五郎の名跡を八代目として襲名することに相成りましてございます。初代は京都・東山の生まれでございまして、清水寺の音羽の瀧にちなみ、音羽屋を名乗るようになりました。由緒ある南座の顔見世興行で、親子揃っての襲名披露が叶ったのも、皆さま方のおかげでございます。襲名のうえは、初代より大切にしてきた“伝統と革新”の精神を胸に精進してまいります」とあいさつ。菊之助も「この度、祖父、父も名乗っておりました、菊五郎の家にとりまして大切な名跡となる菊之助を六代目として襲名することと相成りましてございます。みなさまへの感謝の気持ちとともに、立派な歌舞伎俳優になれるよう、より一層精進してまいります。」と述べた。
夜の部の襲名披露狂言は、音羽屋ゆかりの「弁天娘女男白浪」。菊五郎が弁天小僧菊之助、松本幸四郎が日本駄右衛門、片岡愛之助が忠信利平、中村勘九郎が南郷力丸、中村七之助が赤星十三郎と襲名そして顔見世らしい豪華な顔ぶれに。弁天小僧の「知らざぁ言って聞かせやしょう」から始まる名台詞や、名場面の数々で客席を魅了さしていた。
また本物の“国宝”の仁左衛門は昼の部で「俊寛」を演じ、人間の業をあますところなく見せた。幕切れの、名残惜しさに悲痛な叫びをあげる姿は、客席を感動に包んだ。
他の演目は、昼の部が「醍醐の花見」「一條大蔵譚」、夜の部は「寿曽我対面」「三人形」。25日まで(9日、17日は休演)。