1970年代後半に空前のブームを巻き起こした女性デュオ「ピンク・レディー」のメンバーで、現在はソロ歌手として独自の活動を展開している未唯mieがこのほど都内で新曲発売の記念ライブを行い、そのテーマとなった「ディスコ」についてのエピソードを披露した。
「未唯mie with T-GROOVE&GEORGE KANO EXPERIENCE」名義でリリースされた新曲「Never Did I Stop Loving You」は、伝説の女性ソウルシンガー・アリス・クラークが72年に唯一残したアルバム収録曲。キャッチーなディスコナンバーに自ら日本語詞を手がけ、今月18日に行われた公演では会場のミラーボールに合わせた銀色のスパンコール衣装で熱唱した。
既にデジタル配信されている同曲だが、アナログの7インチシングル盤で11月に発売。未唯mieは「デジタルと違ってアナログ盤は音域がすごいです。低域から高域まで楽しんでいただけます」とレコードへのこだわりを示した。
「ビンク・レディーとディスコ・ミュージック」といえば「79年」の転換期に重なる。76年8月に「ペッパー警部」でデビューし、77年から78年にかけてシングルチャート1位曲を連発。当時はグッズの購買層ともなった小学生ら子どものファンも多かったが、その路線から一転して、ディスコ曲を含むソウル・ミュージックに寄せた大人向けの音楽性で全米に進出したのが79年だった。その年にリリースされた阿久悠作詞、都倉俊一作曲の黄金コンビによる「マンデー・モナリザ・クラブ」もこの日の会場でも披露され、ファンのボルテージも一気に上がった。
未唯mieは「(米国のソウル音楽番組)『ソウル・トレイン』が大好きでした」という自身の音楽嗜好も背景に、プロデューサー・T-GROOVEとのトークの中で昭和のディスコカルチャーを振り返った。「私が高校生だったころはディスコというものがありまして…」と語る時代(73~75年頃)は「箱バン」(店内で演奏する専属バンド)も健在だった頃。芸能界入り後もディスコに足を運ぶ機会があったという。
未唯mieは「土居先生に連れて行っていただいたりしました。当時は赤坂の『MUGEN(ムゲン)』など有名なディスコがたくさんありました。ノリノリでしたね」と懐かしんだ。「土居先生」とは、日本を代表する振付師である土居甫(はじめ)氏(2007年死去、享年70)。60年代は日本テレビ系のエンターテインメント番組「「シャボン玉ホリデー」でザ・ピーナッツやザ・タイガースなどを担当し、70年代は同局系のオーディション番組「スター誕生!」からデビューした森昌子、桜田淳子、山口百恵らに続いてピンク・レディーの斬新な振り付けを編み出したたことで知られる。そんな恩師との懐かしい思い出の詰まった場所もディスコだった。
新曲について、未唯mieは「今回、この1曲に3時間もかけられましたが、ピンク・レディー時代は1時間で3曲をレコーディングしていました。譜面が読めなければ(短時間で複数曲を録音することは)できなかったです」と多忙を極めた若き日を振り返り、「のんびりレコーディングできてよかったです」と余裕を持って音楽作りのできる環境に感謝した。
アンコールは、79年の全米デビュー曲で、ビルボード・チャート37位となった「Kiss In The Dark」でフィナーレ。中高年世代の観客も総立ちとなり、テーブル席で飲食する形式の会場が一瞬、ディスコになった。〝温故知新〟の精神はライブでも貫かれた。
来年はピンク・レディーのデビュー50周年。1月には大阪、横浜、東京で、20人以上のビッグバンドと共に当時のヒット曲を斬新なアレンジで披露する恒例の公演「新春〝Pink Lady Night〟2026」を開催する。