タイタニック号の乗客が持っていた金の懐中時計がオークションに出品される。最も裕福だった乗客の一人の遺体から回収されたもので、落札予想価格は100万ポンド(約2億円)となっている。
18金のジュール・ユルゲンセン製時計で、持ち主はドイツ、バイエルン州出身のアメリカ人実業家兼政治家でメイシーズ百貨店の共同所有者でもあったイジドー・ストラウス氏。1912年4月14日未明に「沈没不可能」とされた客船が氷山に衝突したことで、ストラウス氏と妻アイダさんを含む1500人以上の乗客が犠牲となった。
沈没の夜、アイダさんは救命ボートへの乗船を拒否。ストラウス氏に「あなたを離れない」と告げたことで知られているが、アイダさんの遺体は発見されることはなかった。2人はジェームズ・キャメロン監督の映画『タイタニック』の中で、船が沈んでいく中、客室で体を寄せ合いながら最期を迎えようとする夫妻のモデルとなっている。
沈没から数日後に引き揚げられたストラウス氏の遺品の中にこの懐中時計があり、針は02時20分を指したまま凍結、タイタニック号が大西洋に沈んだまさにその瞬間を刻んでいた。
1888年にアイダさんから贈られたとされる時計には、ストラウス氏のイニシャルが刻印されており、本人の曾孫であるケネス・ホリスター・ストラウス氏によって丁寧に修復された状態となっている。
英ウィルトシャーにあるオークショニア、ヘンリー・オルドリッジ&サン社のアンドリュー・オルドリッジ氏は「驚異的な記念品」だとして、「この時計によって、私たちはイジドールの物語を再び語っているのです」と話す。
オークションでは、アイダさんが11月22日に船内で書いた貴重な手紙も出品、その中でタイタニック号の豪華さについてアイダさんは「なんて船でしょう! とても大きく、見事に整えられていて、最高に豪華です」と記している。
船内で消印されクイーンズタウンで郵便物と共に投函されたこの手紙は、15万ポンド(約3100万円)の落札が見込まれている。
ストラウス氏の時計は落札予想価格が実現した場合、史上最高額で落札されたタイタニック号に関する遺品の仲間入りを果たす。同リストのトップは、生存者を救助したカルパチア号の船長アーサー・ヘンリー・ロストロン氏に贈られたティファニー製の金の懐中時計で昨年156万ポンド(約3.2億円)で落札されていた。