宝塚歌劇団雪組『ボー・ブランメル~美しすぎた男~/Prayer~祈り~』が1日、兵庫・宝塚大劇場で初日を迎えた。
全曲、世界的な作曲家のフランク・ワイルドホーン氏が手がけたことでも話題の作品。ダンディの祖とも言われ、その卓越したファッションセンスと美貌で時代の寵児となったボー・ブランメルの生涯を描き、“美し過ぎる男”の異名を取るトップスター朝美絢にとって、タイトルに偽りなしのピッタリの演目となった。
平民ながら上流社会に執着する父親に育てられたため、いつしか自身も壁の向こうにある世界で、人生を切り開く事を決意する部案メル。やがてプリンス・オブ・ウェールズの庇護を得、社交界に君臨するようになる。過去の人生と決別するため別れた女優のハリエットと再会し、再び恋に落ちるが、やがて運命の歯車は…
朝美はかつてテレビの歌番組に出演したときに、その美しさから「黒髪の人」とトレンド入りし、舞台あいさつでは「美しすぎる男」と紹介されるなど、その美貌は際だっており、今回の役の大前提である“美しいブランメル”に何の違和感もなく入り込ませた。トップ娘役の夢白あや演じるハリエットと再会後、再び愛し合うようになったことで、破滅へと突き進むが、それがわかっていながらも認めようとしない心の動きをしっかりと演じた。芝居にメリハリがあり。それだけにラストシーンが引き立った。
おしゃれで、スーツの原型を取り入れたブランメルらしく、舞台上で何でもクラバットを結んだり、ジャケットを羽織ったりと“生着替え”も。ハリエットとの愛の場面も美しく、ついついオペラグラスで追ってしまいたくなるような、いわゆる“オペラ(グラス)泥棒”が過ぎるシーンの連続となった。
今公演で退団する夢白ハリエットは、ブランメルとの並びも美しく、美貌コンビとして人気だった最後を飾るにふさわしい、大人の女性を演じ上げた。ラストでもしっかりとはなむけの場面が用意されている。
プリンス・オブ・ウェールズを演じた瀬央ゆりあは我が儘だがどこか憎めない、それでいて人を収める側の風格を持つ人物をきっちりと造形。歌声も伸びやかで、ブランメルの友人ヘンリー・ピアポント役の縣千も出過ぎず、引っ込みすぎずの塩梅も絶妙で、しっかりと演じた。
また客席ではワイルドホーン氏が元宙組トップスターの和央ようか夫人と見守り、大きな拍手を送っていた。
ショーは世界中の“祈り”をテーマに、パワフルなダンスと歌でで、組のまとまりと統一感を感じさせる。朝美を筆頭とする、瀬央、縣、華世らのバランスもよい並びとなっていた。
宝塚大劇場は12月14日まで。東京宝塚劇場は2026年1月10日~2月22日。