スウェーデンの俳優・音楽家のビョルン・アンドレセンさんが25日、70歳で亡くなった。ビョルンさんの半生を描いた2021年のドキュメンタリー『世界で一番美しい少年』の共同監督クリスティアン・ペトリ氏が、スウェーデン紙Dagens Nyheterに伝えた。死因は公表されていない。
ペトリ氏は、「彼は勇敢な人物だった」と回想。1年間の対話を経て撮影を開始し、数年にわたる製作は「楽しくもあり、時に痛みを伴うものだった」と語った。
ビョルンさんは15歳で、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』(1971年)に出演。年上の男性が執着する美少年タジオ役で一躍注目を浴びた。ヴィスコンティ監督は「世界で一番美しい少年」とビョルンさんを称し、その言葉は人生に長く影を落とした。
映画公開後、ヴィスコンティ監督とは一度も言葉を交わさず、2003年には「檻の中の珍しい動物のように感じた」と語っている。音楽家としても活躍したが、「『ベニスに死す』のせいで人生がかなり狂った」とも吐露していた。
幼少期に父を事故で、母を自死で失い、元妻との間にもうけた息子は乳幼児突然死症候群で生後9カ月で死去。以後うつとアルコール依存に苦しんだ。晩年には映画『ミッドサマー』に出演するなど深い喪失と向き合いながらも、静かに人生を歩み続けた。