ドラッグストアやスーパーマーケットの運営において、駐車場の確保は顧客満足度と売上に直結する重要な要素である。しかし多くの店舗責任者が頭を悩ませているのが「無断駐車」の問題だ。
来店客ではない何者かによって駐車場が長時間占拠され、本来の利用客が駐車できない事態は、販売機会の損失に他ならない。「停めたいのにいつも満車で困る」という常連客からのクレームは、店舗の信頼を揺るがしかねない深刻な問題である。悪質な無断駐車に対して、何かしらのペナルティは科せられないのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー店舗の駐車場に無断駐車する行為は、法的にどのような問題に該当しますか
他人の駐車場に無断で駐車する行為は、民法上の「不法行為」に該当すると考えます。故意または過失によって、他人の権利や法律上保護された利益を違法に侵害する行為であり、加害者はそれによって生じた損害を賠償する責任を負うことになるでしょう(民法709条)。
店舗の駐車場は、あくまで来店客のために提供されている私有地であり、店舗の許可なく駐車することは、土地の所有権という権利を侵害する行為であることを忘れてはいけません。
ー警告看板に記載した「罰金〇万円」は、法的に請求できますか
「無断駐車は罰金〇万円申し受けます」といった警告看板を駐車場に設置している店舗は多いものの、この「罰金」を法的に請求することは困難です。なぜなら、罰金とは法律に基づき国家が科す制裁であり、一個人が私的に徴収できるものではないからである。
この請求が有効になるためには、店舗側と駐車した人物との間で「無断駐車した場合は〇万円支払う」という内容の契約(合意)が成立している必要があります。しかし、一方的に警告看板を設置しているだけでは、駐車した側がその内容に合意したとは見なされず、契約は成立しないと考えるのが一般的です。
ー無断駐車された車をレッカー移動したり、ロックをかけたりする行為は許されますか
無断でレッカー移動する、タイヤロックをかける、チェーンで囲むといった行為は、法的には「自力救済」と見なされ、原則として禁止されています。
たとえ相手が無断駐車という違法行為をしていたとしても、その車は個人の財産です。最悪の場合、器物損壊罪といった刑事罰の対象になったり、相手方から損害賠償を請求されたりするリスクさえ存在します。
ー無断駐車によって被った損害を、駐車した相手に請求することは可能ですか
店舗側が取りうる最も正当かつ有効な対抗策は、法的手続きに則った損害賠償請求でしょう。無断駐車は民法上の不法行為にあたるため、これによって生じた損害の賠償を請求する権利が認められています。
請求できる損害としては、その駐車場を正規の有料駐車場として貸し出していれば得られたはずの「駐車料金相当額」と、無断駐車によって来店客が駐車できず、商品を購入する機会を逃したことによる「売上の減少分」などが考えられます。
店舗の駐車場における無断駐車は、営業妨害ともいえる悪質な行為です。対応に苦慮する場合は、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。