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80年代香港アクションを継承「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の俳優が語るアクションの魅せ方

伊藤 さとり 伊藤 さとり
悪役・王九を演じたフィリップ・ン
悪役・王九を演じたフィリップ・ン

 今年、日本で1月に公開され、香港映画ブームの再来と言われた映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」。1980年代の香港で、九龍城砦を舞台に黒社会での権力争いを繰り広げる世代を超えた男達によるカンフーアクションは、口コミでロングランヒットを記録し、現在も一部の劇場で上映されている。

 思えば、昭和の日本では香港映画が台頭していた。カリスマであるブルース・リーの活躍や「Mr.Boo!」シリーズのマイケル・ホイにより注目された70年代、ジャッキー・チェン、サモ・ハン(サモ・ハン・キンポー)、ユン・ピョウ、ジェット・リー(リー・リンチェイ)をはじめとするアクション俳優の主演作が公開された80年代。同時に香港の映画会社「ゴールデン・ハーベスト」の名も知れ渡り、香港アクションはひとつのブランド的存在だった。

 そんな80年代の香港映画において、なくてはならない存在であったのが命懸けのアクションに挑むスタントマンだ。

  このスタントマンと80年代の香港アクションへオマージュを捧げる映画「スタントマン 武替道」が7月25日(金)に日本で公開される。出演は「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」に出演し人気を博した信一役のテレンス・ラウと悪役・王九を演じたフィリップ・ン、更には「燃えよドラゴン」(1973年)にも出演し、「男たちの挽歌」(1986年)他、様々な映画でアクション指導も務めるトン・ワイ(スティーブン・トン)という香港アクション好きにはたまらない顔合わせとなっている。

 本作は、80年代に売れっ子アクション監督で、今は整骨院を営むトン・ワイ演じる男が、テレンス・ラウを演じる若者達と共に、再び映画製作に挑む姿を綴ったカンフーアクションだ。

 今回、劇中で人気アクション俳優を演じたフィリップ・ンがオンラインでインタビューに答えてくれたのだが、冒頭から流暢な日本語で「ヨロシクオネガイシマス」と挨拶。これには驚いたが、実は大学時代に日本語を1学期(2カ月)勉強していたという。そんなフィリップ・ンは、「スタントマン 武替道」の企画を当初から聞いていたそうだ。

  「この映画の双子の監督アルバート・レオンとハーバート・レオンは、役者から始まって、その後スタントマンでした。実は師匠が同じなので私の弟弟子にあたる2人なんです。私自身もスタントマン達に色々と教えるクラスを持っていて、この2人にもアクションのことを教えていました。しかもお互いの父親が同じ武術(蔡李佛家拳)を学ぶ仲間でしたので、家族ぐるみで仲が良かったんです。だからこの映画を作ることは、早い段階で彼らから聞いていました」

  本作は、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」後の撮影。再びの共演となったテレンス・ラウとは、前作では敵役として激しい交戦を繰り広げたが、今回の「スタントマン 武替道」では、劇中のスタントマンとスター俳優という設定で共演シーンがある。

 「彼とは『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』で初めて共演して、好青年という印象しかないんです。あの作品のお陰で凄く仲が良くなったので、この作品での共演も嬉しかったですね。普段、俳優同士での共演シーンでは、相手に対して提案をすることは信頼関係がないと出来ないのですが、彼とは違いました。今作で、私が演じるワイとトン・ワイ演じるサム監督の意見が対立して喧嘩をする場面があったんですが、最初はトン・ワイも凄く怖い顔で演じて、まるで2人とも悪役のような表情だったんです。それを隣で見ていたテレンスが僕に提案をしてきたんです。『2人が最初からハードに演じるよりも、最初はあなたの方がむしろもう少し落ち着いた感じでアプローチして、相手の反応を見て、それを変えていった方が僕は良いような気がします。どうですか』と。彼の提案を受け入れて私もやってみたら、これがなかなか良かったんです」

  普段は脚本を読みふけって役に入り込み、現場で一度、演技を見せて監督の指示で変化をつけていくというフィリップ・ン。俳優以外にもアクション監督を務めることがある彼は、今回の現場でのアクションをどう見ていたのだろうか。

  「自分自身がアクション監督をやらずに役者だけで現場に居る場合は、アクション監督がどのようにアクションを設計していて、どんなふうにやってもらいたいと思っているのかを一生懸命考えています。今回の映画については、“大きなアクションでやった方がいいのではないか”ということを考え、監督とコミュニケーションを取りながら作り上げて行きました。大きなアクションで動きつつ、けれど画面上はカッコ良く、綺麗に見せることは絶対に実現しなければならない。この考えは、アクション監督も仲間もスタントマンの皆さんも全員が同じ意見で、今回のようなダイナミックなアクションシーンが誕生しました」

  実はフィリップ・ン自身も、幼少期にジャッキー・チェンの映画を見て、アクション俳優に憧れて詠春拳などの武術を学び、スタントマンを経て、現在、俳優の道を歩んでいる。2023年には日本でスタントマン達の人生に焦点を当てたドキュメンタリー映画「カンフースタントマン 龍虎武師」も公開されるほど、香港アクション映画は今も人気を博しているが、特に本作の舞台となった80年代の香港映画に対しては本人の思い入れも強い。

  「やはり80年代当時の香港映画界は、本当に大胆だったんです。映画を撮るにも時間の制限も場所の制限もなく、好きなように一生懸命撮りたいものを撮ろう!という意気込みだったんだと思います。なんでも実践して、自分たちのやりたいことを実現させていったんです。安全面は別として。当時、アジアでは、香港だけがこのようなスタイルでアクション映画をどんどん作って発信していました。そうするといつの間にかこういった香港映画に熱狂するファンも沢山生まれて、このスタイルが受け入れられていったのではないかと個人的には思っています。『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』に関して言うと、リズム感を重視した現代的な撮り方を意識しつつ、80年代を舞台にした伝統的な物語を映画化したので、観客を惹きつけることが出来たのではないでしょうか」

  本作の冒頭では、80年代の香港アクション映画の撮影現場でのスタントシーンが再現されているが、危険と背中合わせであることを承知の上で、度肝を抜くアクションに挑戦している。それにより、大怪我をしたスタントマンも居た当時を振り返りつつ、映画は「本物のアクション」を撮ろうと再び立ち上がる老アクション監督による情熱の継承作品だ。しかし危険は継承してはならない。これはジャッキー・チェン主演「ライド・オン」(2023年)でも描かれていた問題だ。7月25日(金)に公開される「スタントマン 武替道」は、80年代の香港アクション映画に魅せられた当時子供だった大人達と今の若者達が、共に手を取り楽しめる懐かしさと新しさが相まった熱血アクションエンターテインメントだった。

  

※下記クレジットの記載お願いいたします。

『スタントマン 武替道』 

7月25日(金)全国公開

©2024 Stuntman Film Production Co. Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

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