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仕事ゼロ、借金、どん底…55歳・芸人の新たな道 東西に別れたコンビは再び同じ場所に「この歳でイチから」

中江 寿 中江 寿
水玉れっぷう隊・ケン
水玉れっぷう隊・ケン

 お笑いコンビ・水玉れっぷう隊のケン(55)がこのほど、よろず~ニュースのインタビューに応じた。吉本新喜劇「金の卵12個目オーディション」に合格して、今年入団。新天地での心境、東京進出した当時の苦労などについて語った。

 芸歴33年の芸人が新たな挑戦。「新喜劇に入れていただいて、すごい新鮮な気持ちなんですよ。昔から知っている人、初めての人もいますし、いろんな人とお話しできるのが楽しいですね。この人と絡んだらどうなるか、どう突っ込んでくれるのかと、ずっと考えています」。55歳となっても、まだまだ意欲的だ。

  高校時代にバイト先で知り合ったアキと92年に水玉れっぷう隊をコンビ結成すると、アイドル的な人気を誇り、一気にスターダムへ。しかし、主戦場の大阪・心斎橋筋2丁目劇場が99年で閉館して活躍の場が少なくなり、01年にルミネthe よしもとができることをきっかけに東京へ進出した。

 上京した当初の仕事はゼロに近かった。劇場の出番は多くて月2、3回。バイトしながらの生活で、収入は厳しかった。子供が生まれたばかりで単身赴任。家族への月23万円の仕送りも借金で埋めるようになった。「歯を食いしばりながら、アカン日々を過ごして。めちゃくちゃつらかったですね」。コンビ名を「バイキング」に改名した時期もあった。先輩や周囲に助けてもらっているうちに、徐々に仕事も軌道に乗り、安定した収入を得られるようになった。

 ルミネをはじめ、09年に誕生した品川よしもとプリンスシアターでの出番が増えた。「ルミネ劇場では新喜劇をやっていた時は水玉で座長までやらしてもらったり、品川に劇場ができて、結構任されたりしていました」。しかし、11年に活動の中心だったプリンスシアターが閉館。再びイチからのスタートとなった。14年には相方のアキが新喜劇に入団するため大阪へ戻ることに。一緒に入団するプランもあったが「まだ東京でやり残したことがある」と思いとどまった。

 このままで帰りたくはなかった。「なんかモヤモヤしていたんですよね。やっぱり東京で、ある程度仕事をいただいて、知名度も上がって、大阪にお土産を持ってじゃないと帰られへんと思ったたんです。だから、断ったんです」。ひとり残り、スペシャルコメディーの舞台をはじめ、ドラマ、映画などに活動の場を求めた。コンビを解散する話も出たが、会社とも相談して続けることにした。東京と大阪と別れても、水玉れっぷう隊として定期的にライブは行っていた。

 世話になっている先輩の石田靖をはじめ、周囲からはたびたび新喜劇入りを勧められていた。昨年、新喜劇GMの間寛平に、アキが座長を務める新喜劇の全国ツアーに「出ないか?」と声を掛けられ、ゲストとして参加することになった。その時も寛平から誘いを受け、アキからも「大阪来んねやろ~」とジョーク交じりで言われたが、その気にはならなかった。

 心境に変化が起きたのは、今年3月に行われたアキのプロデュース公演の舞台「時が来た」に出演することを決めた時だった。「(昨年の)9月か10月くらいですかね。『幕末の芝居で、熱い芝居をやろうと思てんねん。ケンには絶対出てもらいたい』と言われて」。返事を先延ばしにしていたが、マネジャーを通じて催促の連絡があって承諾。「ちゃんとせなアカンな、みたいなモードに入って」。アキのラブコールに秘めた思いも感じ、大阪に戻って新喜劇に入ることを決意した。

 奈良県の介護施設に入所している父の存在もあった。「なんかいろいろと重なって」。ただ、入りたいからと言って、簡単に入れるわけではない。19年以来となる吉本新喜劇「金の卵12個目オーディション」が開催されることもあって応募した。

 芸人として長いキャリアがあっても、合格したら新人座員としての立場。「やっぱり(オーディションを)受けるんか、というのは自分の中であったんですけど。結局、東京で歯を食いしばって頑張るぞと思っていたのも、プライドなんですよね。それをいったん、ちょっと置いておいて、新喜劇に入ろうかとなったときに、もうそのプライドはなかったですね。逆に、新たな気持ちで新たに挑戦できる。このトシでイチからという体験は、たぶん、できないと思うので」。プライドよりも面白さが上回った。

 正式な座員となり、ゲスト出演していたときと、心構えは全く違うという。「自分の好きなように面白いことをやろうというよりは、ちゃんとやろうと」。座長をはじめ座員が積み重ねてきたものを尊重したい気持ちが大きい。

 改めて舞台に立つ喜びをかみしめる。「人前に立ってやるのが好きなんですかね。お笑いが好きなのはもちろんありますけど、お芝居をするのも好きですし」。栄光と挫折を味わった55歳のベテランは〝ルーキー〟として再スタートを切る。

 ◆水玉れっぷう隊・ケン 1969年8月22日生まれ、55歳。奈良県出身。アルバイト先で知り合ったアキと92年にお笑いコンビ「水玉れっぷう隊」を結成。01年に東京へ進出。14年にアキが吉本新喜劇に入団するにあたり、東京に1人残る。吉本新喜劇金の卵12個目オーディションに合格者し、25年に吉本新喜劇に入団。

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