アマチュア落語家の全国大会「第17回社会人落語日本一決定戦」の決勝が7日、大阪・池田市内で開催され、東京都の運送会社勤務・鈴木竜一さん(61)=高座名:松鈴亭竜扇(しょうれいてい・りゅうせん)=が優勝に輝いた。大会初出場にして社会人落語の頂点に。「生きていて良かった。本当にありがとうございます」と喜びをにじませた。
鈴木さんは自身の職業を生かし、物流が抱える人手不足をテーマにした創作落語「ドロ~ン」を披露。ドライバーをあの世から募集するという奇想天外な設定と、稽古を重ねたたしかな話術で会場の心をつかんだ。
大会総括の桂文枝(82)は「(審査は)すんなり決まったわけじゃない。レベルが高かった」と混戦だったとした上で、「物流の『2024年問題』という実際の社会問題を取り上げたこと、ストーリーが面白かったこと、人物の分け方がうまかったことを総合的に考えて」と評価した。特に「あの世からドライバーを連れてくる」という設定の妙については「僕の落語を超えていた」とまで激賞した。
鈴木さんが落語を始めたのは約10年前、江戸川区の落語ワークショップがきっかけだった。子どものためにと参加したが、自身が“落語沼”にどハマり。それ以降、落語中心の生活スタイルにがらりと変化。時には娘の運動会の日に落語会の予定を入れてしまい、妻から「このままなら別れることも考える」と怒られたこともあったとか。その後は家族との時間と両立しつつ、腕を磨いてきた。
昨年、還暦を迎えたタイミングで今回の創作落語を作り、今年初めて同大会に応募した。「初出場だったんで、まさかここまで来られるとは」と夢見心地。落語をしていること自体は職場でも認知されているが、運送業をテーマにした創作落語を作ったことは内緒にしていたという。「これで完全にバレました。明日からどうしようかなと。いざとなったら転職を考えております」と笑わせた。
2位は京都府の郵便局員・藤井千亜紀さん(53)=高座名:立の家やよい=、3位は神奈川県の会社員・川野要嗣さん(58)=高座名:麹家ペイ太郎=が受賞。また、池田市長賞には富山県のラジオパーソナリティー・寺岡朋未さん(52)=高座名:ぷぅ風亭みるみる=が選ばれた。