京都府京丹後市は、100歳以上の人口比率が全国平均の約3倍。健康長寿者が多い地域として知られている。
2017年から京都府立医科大学が、現地の市立弥生病院と健康寿命についての共同分析を開始。京丹後地域に暮らす65歳以上の住民を対象に、職業、食事、睡眠時間、腸内細菌など600項目以上にわたり健康長寿の研究を進めている。なぜこのエリアはご長寿が多いのか。解析に携わる医学博士の内藤裕二さんに詳しく話を聞いた。
――解析の内容についてお聞かせください。
内藤:65歳以上の住民800人弱のなかで、私たちの基準で要介護の前段階である“フレイル”と診断される人は、わずか約15%。その15%のフレイルの人たちにはBMI25以上の肥満、糖尿病、高血圧が多く、日常的に体を動かす頻度が低く、睡眠の質が悪いことが分かりました。
食・栄養素に関する解析を進めると、フレイルの人たちは植物性たんぱく質、特に豆類由来のたんぱく質の摂取が少ない。栄養素でいえばビタミンB群、ミネラル、食物繊維が不足していました。
この地域の住民の主なたんぱく源は大豆と魚。元気な人は豆と野菜をしっかり食べています。2024年9月に発表されたフジッコと京都府立医科大学の共同研究では、豆類がフレイルになるリスクを低下させることが判明。特に男性にはっきり関連が認められました。海も川もあるからか食卓に小魚が並ぶ機会が多く、カルシウムなども無理なく摂れているので、関節や骨が強いんです。
大豆は自分たちで食べる分を家庭菜園で作っている人も多かったです。1年通して植物性たんぱくを摂っているので、同世代よりも筋肉がつきやすく、さらに農作業は中腰で足腰が鍛えられる、と一石二鳥でした。
――解析を進める中で驚いたことは?
内藤:特別な活動をしているわけではなく、この地域の普通の食生活が結果的に健康長寿に繋がっていることが素晴らしいです。大豆と魚を毎日無理なく摂る。これが日本人の腸にあった食生活なんだと思います。この京丹後の暮らしを、全国に拡げていきたいです。
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腸内細菌が健康に与える影響も明らかになりつつある。健康的な食事を習慣化し、ただ長生きであるだけでなく、健康的な長寿を目指す。京丹後の暮らしは、高齢化が深刻な日本の目指すところなのではないだろうか。