小学生が通学時に背負うランドセルの重量によって体への負担増が懸念されている。その中で、数々の対策商品を開発、発売している「フットマーク」(本社・東京都墨田区)が当事者への意識調査を行い、状況に応じて使い分ける「セカンド・ランドセル」の使用が広まりつつあるなど、ランドセルの選択肢が多様化していることが分かった。
同社は「2024年度ランドセルの重さに関する意識調査」として、通学にランドセルを使用している小学校1~3年生とその親1200組を対象に、今年3月にインターネットによる調査を実施した。
その結果、2021年以来、今回で4回目となる調査で、教科書を入れた状態でのランドセルの重さの平均が3.94キロと初めて4キロを切ったことが確認された。昨年の4.13キロより減ったのだが、それでも小学生の90.4%が「ランドセルが重い」、保護者の85.8%が「ランドセルが重すぎるのではないか」と感じていると回答した。
長年、ランドセルの重さと児童への影響を研究している大正大学の白土健教授は「置き勉(※学校に教材を置いて帰宅すること)が推奨されてきていることや、各社の企業努力でカバン自体が軽量化してきていることも平均重量が減った要因の一つ」と指摘した。
今回の調査ではランドセルの重さを理由に「学校に行きたくないと感じる」という小学生の声もあった。白土氏は「荷物の重さは減っていますが、子どもの心理面を考えると、特に低学年は体力も少なく、暑さや雨などの天候によって負担が増す部分も大きいです。引き続き現場の実態にそって解決策を見出していくことが重要です」と課題を挙げた。
また、親の意識として「革製のランドセル以外にナイロン製・ポリエステル製のランドセルがあることを知っている」という回答が前回の55.2%から64.6%に上昇していた。
白土氏は「セカンド・ランドセルを使用する人もいます。荷物が重たい曜日や蒸れやすい夏場だけ変えるなど、臨機応変に使い分けをしている声も聞きます。革製以外の選択肢も増え、周囲の目も気にならない風潮も出るなど、環境の変化もそうした動きを後押ししているのではないでしょうか」と補足した。
この「セカンド・ランドセル」について、同社に問い合わせると、開発担当者は「一般的に収納力にも優れた布製の軽いランドセルのことで、従来の革製ランドセルと併用し、用途に応じて使い分けるスタイルを指します」と説明。さらに、「本来、学校側としても『革製ランドセルでなければならない』という明確な規定はあまりありませんので、お子様の負担を軽減するために、ご家庭の判断でさまざまな選択が可能な状況です」と補足した。
同社では20年に布製ランドセル「ラクサックジュニア」を発売以降、「既に持っている革製ランドセルと使い分けたい」という声が年々増加しているという。担当者は「現在の市場では革製に対抗するように布製ランドセルを販売されるケースが多いですが、『セカンド・ランドセル』という概念が広まっていけば、2個持ちに対する抵抗も薄れ、それぞれの特徴を生かして共存する未来も見えてくると感じています」と付け加えた。
また、重さ対策として、自治体が新1年生に軽量カバンを提供するケースもある。白土氏は「背景にはランドセルの購入価格の高額化も影響の一つであると考えられ、格差の象徴となり得る懸念もあります。一方で祖父母から贈られる〝入学祝いの定番〟としての風習も、なお根強く残っていますので、各ご家庭に合わせた選択性の自治体の動きは大変良い傾向だと思います」とコメントした。
同氏は「現場の工夫、カバンの改良などでランドセルの重さが軽くなっていることは良い傾向」とし、「数年前は異質なものとして見られていた革製以外の選択肢が一般化してきているも要因の一つと考えられます。次に必要なのは、荷物を取捨選択し、いかに上手に整理整頓できるかということではないでしょうか。ぜひご家庭でもお子さんと一緒に知恵を出し合う時間を取っていただき、より楽しく登校ができることを願っています」と呼び掛けた。