「大阪・関西万博」の“原点”として比較される「日本万国博覧会」(EXPO’70)だが、1970年の開催前後に存在したカルチャーに関心を持つ“後追い世代”がいる。その時代を象徴する若者文化「ゴーゴーダンス」を再現する音楽イベントが5月5日の“ゴーゴーの日”に山本リンダ、平山みきらレジェンド歌手をゲストに迎えて都内最古のダンスホールで開催される。プロデュースする平成生まれで昭和文化に造詣が深い20代の女性ダンサーに話を聞いた。(文中敬称略)
同イベントは「昭和100年(2025年)5月5日に昭和の文化と空気を再現する」というコンセプトで、「Tokyo A GoGo(トウキョウ・ア・ゴーゴー)」と題され、昭和のゴーゴーカルチャーの“伝道師”である「踊るミエ」が全面プロデュース。特別ゲストにデビュー60周年の山本リンダ、55周年の平山みき、45周年の円道シャーク・一成という3人の歌手が一堂に会し、DJのコモエスタ八重樫、バンド「斉藤ネヲンサイン」、8人のゴーゴーダンサーらが会場を盛り上げる。
昭和40年代(1960年代後半~70年代前半)のカルチャーを体現しているミエは1996年(平成8年)生まれの28歳。幼少期の2000年頃、「昭和」に目覚めた。
「幼稚園の運動会でフィンガー5の『恋のダイヤル6700』を演目でやって、すごく引っかかったんですね。当時は『モー娘。』がはやっていた時代でしたが、フィンガー5やピンク・レディーのように70年代の歌謡曲黄金期にいて、老若男女に分かりやすいポップでキャッチーなところが子どもながら心に刺さった。父と一緒にレンタルCD店に行ったり、テレビの懐かしの曲特集みたいな番組を見てヒット曲を覚え、さらにさかのぼって(60年代の)ザ・ピーナッツのCDも小学生の時に聴いていました」
尊敬する歌手は弘田三枝子(2020年死去、享年73)。大学時代に始めた活動を後押ししてくれた恩人でもあった。
「歌謡曲の番組を見ていく中で、ダントツに歌がうまいと心引かれた人が弘田三枝子さん。大学生の時、ミコちゃん(弘田の愛称)のコンサートがあった長崎まで追いかけて『好きなんです』とサインをいただいたら、私のことを覚えていてくださって、その後、2017年に初めてイベントをやった時に、事務所を通して『ミエちゃん、昭和歌謡を歌い継いでね』とビデオメッセージを送っていただいた。私の活動の最初によくしてくださった芸能人の方なので、そのメッセージを裏切らないように活動を続けなければと思っています」
また、ミエは「ゴーゴーで踊るスタイルのイメージであり、目標は黛ジュンさん」という。「流行歌と健康的なミニスカートとゴーゴーと付けマツゲ…というジュンちゃんをアイコンにして頑張っているところです。漫画では『ルパン三世』の次元大介が小学生の頃から憧れの男性。渋くて好きです」。そんな嗜好から独自の世界を確立した。
3回目となる今企画の会場は東京・鶯谷で1969年に開店した都内最古にして最後のダンスホール「新世紀」。ミエは「69年といえば、ゴーゴーが一番はやった時代。大きなハコで、生バンドの演奏があり、今回はお立ち台を大きくしてお客さんにも初めて乗って踊っていただく取り組みをします。昭和にできた建物で、今の若い子たちがベルボトムを履いて、サイケなシャツ着て、初出演のリンダさん、2回目となる平山みきさんも生バンドで歌う。楽しんでいただけたら」と構想を描く。
5月5日は一般社団法人「日本記念日協会」に『ゴーゴーダンスの日』として登録。ゴーゴー隆盛の70年に行われた万博が今年も同じ大阪で開催中という縁もある。ミエは7月19~21日に万博の「関西パビリオン兵庫県ブース」で上映される新作映画「EXPO’70 前衛の記憶~アコを探して」にも出演。タイムマシンで55年前の昭和からやってきたゴーゴーダンサーのごとく、時代を横断して躍動している。