今、ロシア人の間で日本観光が人気になっている。暖かいコートと毛糸の帽子に身を包んだ何百の人々が、寒いモスクワの空の下、連日整然と並ぶ。桜のシーズンが本格化する中、日本で花見を楽しもうとモスクワの日本大使館前には連日、ビザ申請者の長蛇の列ができている。
日本のビザ(査証)が人気を博している理由は、大半の欧州諸国がロシアとの直行便を禁止していることとや日本ビザの申請手数料がロシア人に対しては無料であることとされている。ウクライナ戦争への多額の政府支出がもたらした景気回復による実質賃金の増加を最大限に活用しようと、国民は欧州に代わる新たな旅行先を開拓している。
モスクワに住むエリザヴェータ さんは「ずっと日本に行きたいと思っていた。ビザを取得する手続きが早かったことも後押しになった。最近は欧州へ行くのが難しくなっているが、日本のビザは4、5日で取得できる。日本に行くことに決めた」と話した。
ロシア観光産業連合会のドミトリー・ゴリン副会長はこの状況について、日本で休暇を過ごすロシア人の数は昨年の約10万人から今年は倍増するだろうと予測する。ゴリン副会長は「第1にビザの取得が非常に簡単で、4、5日で発給され、しかも無料であるため、ビザに関する問題がない。唯一の問題は大使館での長い行列だが、今は日本旅行のハイシーズンだから無理もない。春に日本を訪れる人にとって、桜はおそらく最も人気のある象徴だろう」
また、日本は昨年11月、ロシアからの訪問者に対し、滞在中のホテル代を支払ったことを証明する書類の事前提出義務を停止した。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻する前は毎年、何百万人ものロシア人が欧州を訪れていた。今は欧州の領空がほとんどロシアの航空会社に閉ざされているため、間接的なルートを経由する必要がある。さらに欧州旅行は高額になった。現在の欧州訪問者数は年間約30万人で、2019年の水準を約90%も下回っている。
今年に入り、トランプ大統領が再任した米国とロシアの関係改善がウクライナ戦争の何らかの解決につながるとの期待からルーブルが急上昇。ロシア国民は、日本や他地域を訪れやすい状況が生まれている。
モスクワ在住のアンナさんは「日本に行くのはこれで5回目。この国が大好きで、日本語を勉強している。沖縄や東京に行く予定だ。全体的に、日本の文化が本当に好きだ」と話していた。