タレント・漫画家の浜田ブリトニー(45)は昨年まで8年間に渡って「スピリチュアル」の世界にのめり込んだ。その体験をつづった電子書籍を発売し、3月にはテレビ番組で霊感商法の実態などを解説している。一方、その世界から「脱」することができない人たちにも理解を示し、今も向き合う浜田に話を聞いた。
浜田は2006年に漫画家デビュー。翌年にギャルの生態を描いた「パギャル」の連載で注目され、08年には〝ホームレスギャル漫画家〟として多くのテレビ番組にも出演した。現在は飲食店オーナー、タレント、漫画や書籍の執筆、国内外での漫画講師(7月には米シカゴで登壇予定)など幅広く活躍し、私生活では2児のシングルマザーだ。昨年発売した電子書籍は「スピリチュアル難民の私たちへ」と題された。
「スピリチュアルにハマったのは2016年頃。大変なことや心を病むようなことがあった時で、神頼みみたいな感じでした。誘われて行った占いの先生に『今あなたに足りない物』としてパワーストーンを勧められ、占い代と合わせて5万円弱くらい。その時は『これがあれば大丈夫だ』と思いました」
価格の相場について、浜田は「その人の持ち物を見て買えそうな金額を言ってこられます。女性だとカバンの値段が基準みたいで、私が持っていたカバンは5万円くらいだったので、ほぼ同額でした。安いカバンを持っていたら1万円くらい、高級ブランド品を持っていたら10万円くらいに設定されていたかもしれないです」と明かした。
その他、どのようなグッズを購入したのか。
「部屋で炊くヒーリングアロマ、『波動水』という1万円以上する水、波動が良いとされる幾何学模様の入った絵、マグカップ、傘など。さらにネックレスやピアス、前方のポケットに波動石を入れられるラッキーカラーの赤い(下着の)パンツとか、財布を置くと金運が上がる(小さい)ベッドとか…。邪気が取れる塩は波動が良い高価な『ヒマラヤの塩』とかで、盛り塩を室内の四方八方から、玄関、水回りのトイレや台所、お風呂などに30分以上かけて回った。玄関のドアノブは塩で錆びちゃって、家に来た人に『何かあったの?』と聞かれました(笑)」
8年間で約1500万円を使った。グッズ代は約500万円で、約1000万円が全国で開催された開運セミナーへの交通費や宿泊費などの旅費だった。
「目が覚めた」のは昨夏のこと。自身の病気や離婚、闘病する漫画家・御茶漬海苔氏のサポート、オーナーとして新展開した店の経営などで多忙を極めた頃だ。「いろいろ重なり過ぎてスピリチュアルどころじゃなくなった。そこから『モノがないと幸せになれないというのは何か違うな』と思い始めた。聖書に『偶像崇拝するな』と書かれてあるのを読んだことも目覚めのきっかけの一つにはなりました」。結果的に「多忙」が状況を変えた。
とはいえ、開運グッズの購入によって「心が整った」と感じたことも事実。「グッズをきれいに並べてブツ撮りして、思い出として写真に収めてから捨てた」。記憶を記録にとどめた上で処分する断捨離を行った。一番高価だった150万円のネックレスを売りに出すと「10分の1にもならなかった」という。信じていたから価値があったと実感した。
生活は好転した。「家中の盛り塩、グッズの配置などを辞めたことで2~3時間ほど時間が浮き、執筆や自分のために使えた。セミナーに行かなくなった分のお金も貯まるようになった」。それでも、スピリチュアルの世界を完全否定はしていない。
「頼った自分がいたことは否定できない。スピリチュアル系の友だちとの付き合いは今もあるし、処分したつもりのお守りやストーンがカバンからポロッと出てきたりしてリバウンドするおそれもある。だから、私もまだ〝脱スピ〟中ですし、それがないと生きていけない人たちに向けて書いた本のタイトルも『難民』にしたわけです。私も元々は『ネットカフェ難民』ですから。無理に『脱』しなくてもいい。それより大事なのは『依存しないこと』。何が本当で何が嘘なのか分からない時代だから」
浜田は「スピリチュアルも楽しむ分にはいいんですよね」と最後に付け加えた。〝救われたい人〟の依存心を利用した詐欺が横行している時代。線引きをした上で楽しめる〝遊び心〟も求められている。