先日、スイスに旅行に行った知人から「ポテトチップスが700円だった」と聞かされて驚いた。日本でも物価の高騰がニュースになっているものの、海外の物価の高さを実感する機会は限られる。日本の物価と海外の物価を比較する指標のひとつ「ビッグマック指数」を知れば、世界の中で日本の物価がどのくらいなのかが推測できる。
ビッグマック指数とは、1986年に英国の経済誌「The Economist(エコノミスト)」が考案した非公式な経済指標である。マクドナルドのビッグマックが世界中でほぼ同じ品質で販売されている点に着目し、各国のビッグマック価格を比較し、為替レートの適正水準や購買力平価を推計するものだ。
ビッグマック指数は下記の方法で算出される。
(各国のビッグマックの価格/米国のビッグマックの価格/為替レート-1)×100
上記の式に2025年1月時点の日本状況を当てはめると、以下の結果が得られる。
(480/5.79/154.35-1)×100=-46.29
ビッグマック指数は高ければ高いほど、その国の通貨の購買力が高いという見方だ。
この結果からアメリカのビッグマックの価格と比べて、日本のビッグマックは約半分の値段であることがわかる。
またエコノミスト誌が発表した2025年1月の情報によると、日本の順位は掲載されている54カ国中44位となっており、決して物価が高い国とはいえないことを示している。因みに上位5カ国のビッグマック指数は以下のとおりだ。
スイス:38.04
アルゼンチン:20.08
ウルグアイ:19.35
ノルウェー: 15.28
ユーロ圏:2.81
1位のスイスでは、円換算したビッグマックの価格は1,234円となっており、日本の倍以上の価格となっている。知人がスイスの物価に驚いたのも理解できる。
このようにビッグマック指数は、国家間の比較が容易にできる指標ではある。ただし、原材料の調達方法や輸送コストが異なる点や、消費税率の違い、労働コストの差などの要因を考慮する必要があるため、完全に正確な経済指標ではない。あくまでも大まかな傾向を捉えるものとして扱わなければならない。
それでもビッグマック指数は、経済の複雑な仕組みを身近な商品で表現した巧みな指標といえるのではないか。経済に詳しくない人でも、世界経済の大まかな傾向に関心を持つきっかけとなるだろう。ビッグマック指数に目を向けて、グローバル経済を肌で感じてみてはどうだろうか。