地域医療は住民の生活を支える基盤であり、地域医療の質はその地域の暮らしやすさを左右します。しかし、医療施設の偏在や医師不足、高齢化への対応など、地域医療が抱える課題は年々深刻化しています。「医療法人ONE きくち総合診療クリニック」はこのほど、自治体の保険課、または保健センターに勤めている518人を対象に行った「地域医療の現状」に関する調査結果を公表した。
「どんな方が相談に来ることが多いですか?(複数回答可)」と質問したところ、「高齢者(58.9%)」、「小さな子どもを持つ親(44.6%)」、「妊婦さん(26.6%)」の順となり、さまざまな住民がいる中で地域に相談にくる方として高齢者が約6割と最も高かった。
「悩み相談として、経験があるものを選択してください(複数回答可)」に関しては「どこの病院に行けばいいかわからない(35.3%)」、「遠くて通院が難しい(29.3%)」、「病院が少ない(24.9%)」と続いた。アクセス面や病院の絶対数の少なさも上位に挙がったが、そもそもの病院選択が難しいといった相談が最多だった。
悩み相談の質問で「特にない」と回答した人以外に「こういった悩みに対し、地域医療として十分な対応ができていると感じますか?」と質問すると、「全く感じない(11.5%)」、「あまり感じない(52.0%)」と約6割が十分に対応できていないとみている。十分な対応が難しいと感じている要因として考えられるものを選択(複数回答可)してもらうと、「医療機関の偏在(37.6%)」、「地域密着の医療機関が少ない(37.6%)」、「医師や看護師の不足(37.3%)」が上位に挙がった。
「自治体で、地域医療において最も顕著な課題は何だと感じますか?」と聞いたところ、「地域住民の医療ニーズの多様化(18.9%)」がトップで、僅差で「医師不足(17.6%)」、「住民の高齢化への対応(15.6%)」となった。同調査では最多の課題として提示された「地域住民の医療ニーズの多様化」には、特定の専門医療機関だけでは十分に対応しきれない現状を示唆しているとしている。
「総合診療かかりつけ医が増えることは、地域医療にとって必要だと感じますか?※総合診療かかりつけ医=いつでも、なんでも、だれでもまず診ることができる医者」では、「とても感じる(35.9%)」、「やや感じる(46.0%)」と合わせて約8割が必要性を感じていた。