韓国で、2025年に公開予定の映画「暴落」には、今年11月に突然この世を去った、俳優のソン・ジェリムさん(当時39歳)が出演している。遺作となった本作でソン・ジェリムさんは、仮想通貨市場に飛び込んだ天才ビジネスマン役を演じ、独歩的な存在感を放っているという。
「暴落」は、50兆ウォン(約5兆円)の蒸発で世界を震撼させた、「仮想通貨大暴落事件」の実話を基に描いた物語。ソン・ジェリムさんは、「MOMMY」という名前の仮想通貨開発者で、“自称天才ビジネスマン”と呼ばれる主人公、ヤン・ドヒョン役を演じた。青年・女性・障害者加点などを悪用し、青年創業支援金を不正受給。故意の倒産と廃業を繰り返し、投資誘致を受けて新たな局面を迎える人物の、複雑な感情を繊細に描き出した。
ソン・ジェリムさんは生前、同作に関するインタビューで「無謀かもしれないが、現実から抜け出せない人もいる」と、単純に役割以上のメッセージを込めたことを示唆していた。
いつでも多種多様な役を自分のものにし、繊細な演技を見せ、異色の熱演を期待させる“カメレオン俳優”の姿を、二度と見ることができないという事実が、より深い余韻を残す。
映画「暴落」は、取り返しのつかない選択をした、青年事業家の年代記を通して、スタートアップ投資の裏側や、昼は株、夜はコインの一獲千金主義にハマった若者たちの現実を描く。多くの被害者を量産し、いまだに司法機関の最終的な判断が出ていない実話を扱っているため、徹底した事前調査と法律事例に基いて、精密な検討と法律諮問を受けた作品だ。
出演はソン・ジェリムさんをはじめ、ドラマ「嫉妬の化身」「力の強い女 ト・ボンスン」「青春時代2」のアン・ウヨン、ドラマ「三姉弟が勇敢に~恋するオトナたち~」、Disney+オリジナルシリーズ「カジノ」のミン・ソンウク、ドラマ「奇跡の兄弟」「カイロス」のソ・ヒジョン、映画「ホラー・ストーリーズ」、ドラマ「無法弁護士~最高のパートナー」「彼女はきれいだった」のチャ・ジョンウォンなど。
監督は、「契約社員だけを9回した女(原題)(英題:Nine Times Fired)」で、仏カンヌ国際ドラマフェスティバルから高評価を受け、社会告発メッセージを込めたルポを多く演出した、放送局時事教養プロデューサー出身の、ヒョン・ヘリ氏がメガホンを取り、堕落した青年実業家の物語に、リアリティーを加えた。