舞台「パラサイト」手がけた鄭義信が9年ぶりに二人芝居「杏仁豆腐のココロ」演出 浅野雅博&尾上寛之が出演

椎 美雪 椎 美雪
舞台「杏仁豆腐のココロ」は12月12日より浅草九劇で開幕する
舞台「杏仁豆腐のココロ」は12月12日より浅草九劇で開幕する

 作家・演出家の鄭義信(チョン・ウィシン)が座付き作家・演出家を務める劇団・ヒトハダの番外公演「杏仁豆腐のココロ」が、12月12日より上演される。同作は、鄭氏が2000年に執筆した二人芝居で、クリスマスの1日を舞台に、別れを前にした小夜子と達郎という一組の夫婦が、これまでの関係を振り返り、泣き笑う様を描く。

 鄭氏が「一夜限りの上演のつもりで書いた」という同作は、その名作ぶりが人気を博し、数々のカンパニーで上演されたほか、海外でも上演されているほど。今回は「杏チーム(村岡希美・浅野雅博)」「仁チーム(高畑こと美・尾上寛之)」の2チーム制で上演される。稽古が始まって数日が経ったという、ヒトハダ劇団員であり「達郎」を演じる俳優の浅野雅博と尾上寛之、そして鄭義信氏に話を聞いた。

――2022年に劇団ヒトハダが旗揚げされて、3回目の公演で早くも“番外編”として「杏仁豆腐のココロ」が上演されることになりました。

 鄭「『仁チーム』で尾上とペアを組む、女優の高畑こと美が『40歳になる前に[杏仁豆腐~]をやりたい』と、僕に言ってきたのがきっかけです。『じゃあやりましょう』となって、せっかくなら立ち上げた劇団でやるのはどうかと、いつの間にかするすると詳細が決まりました」

――「杏チーム」で浅野さんと夫婦役を務めるのは、ナイロン100℃・阿佐ヶ谷スパイダースに所属する村岡希美さんです。

 鄭「彼女へのオファーは、僕が一度ご一緒してみたかったという希望がかなった形ですね」

 浅野「僕も、村岡さんとは初共演なんです。初めてご一緒できてうれしいですね。村岡さんは何でもできる方なので、初めてなのにすでに安心して稽古しています。いろいろな引き出しを見せてくださるところは、さすがの一言です」

――尾上さんと高畑さんも、初顔合わせだと伺いました。

 尾上「そうなんですよ。でも、こちらも楽しんで稽古してます。僕の思う達郎は、多分受け身側だと思うので、(小夜子を)ちゃんと受け止めながら演じられたらいいなと思ってます。ことちゃんが出してくれたものに対して、『そう来るなら、こうやってみようかな』という感じです」

――2チーム制ということですが、稽古はどんなふうに進められているのでしょうか。

 尾上「一日おきに稽古しています。だから台本の読み合わせから、互いのチームの稽古を、一切見ていないんですよ。村岡さんと浅野さんが、どんな小夜子と達郎を演じられているのか全く分かってないんですけど、僕はその方がいいかなと思ってるんです。見てしまうと、どうしても(その演技や動きに)引っ張られちゃうだろうなと思って。お2人の演じるものは絶対面白いから、見たらやべえなと思う(笑)」

 浅野「人間だから、見てしまうとつい意識しちゃうよね。『ああ、これ面白いな』と思ったら、やっぱり自分もやりたくなっちゃう」

――演出家として、唯一両チームを見ている鄭さんから見た、それぞれの雰囲気はいかがですか?

 鄭「面白いことに、2チームはどんどんテイストが違ってきてます。3人で話し合いながら稽古を進めてるんだけど、達郎像も小夜子像も、当初からはだいぶ変わって来ていて。『どこまでズレるかな』と、それもまた楽しみたいなと思いながら稽古してます」

 尾上「脚本を書かれた鄭さんの思いや正解は、きっと台本の中にあるんですけど、演じる人間が変わるだけで、作品のカラーが全然違ってくるのが、舞台の面白いところですよね。きっと2チームとも、全く違って見えるだろうし、それをお客さんが楽しんでくれたら、とてもいいことだなと思います」

――ちなみにお2人が演じられる「達郎」は、どんな人物だと思いますか?

 尾上「僕の演じる達郎は、社会に馴染もうとはしたけど、馴染めなかった人間なんだろうなという感じになってると思います。周りの環境に恵まれなくて、うまくいかなかったというか。何か問題があったんだろうな」

 浅野「僕は、天才的にダサいやつだと思います、いい意味でダサい。すごく冴えないやつなんでしょうね、営業向きではない人。だけど本当は、人一倍気い使いなやつなんだろうなって、その部分は僕と合ってるんですよねえ(笑)」

 尾上「浅野さんて、普段から気を使ってるかなあ?(笑)」

 浅野「どんだけ気を使ってると思ってるんだよ!(笑)それでヒトハダはうまくまわってるんだよ!」

 全員爆笑

――ちなみに「杏チーム」は50代の、「仁チーム」は30代の達郎と小夜子だそうですね。

 浅野「偶然にも。僕と尾上君は、年齢がほぼひとまわり違うんですよね。それゆえに、観劇後にお客さんが持って帰るものが、全然違うと思うんです」

 鄭「だから作品の味わいも違うだろうし、ほんと、両チームとも見てもらいたいよね」

――最後に「杏仁豆腐のココロ」上演に向けて、メッセージをお願いします。

 鄭「『杏チーム』と『仁チーム』、ともに違うテイストになりつつあるので、ぜひ両方観ていただきたいです。この作品を見て、何かがどうこうということはないんですけど、年末の忙しい時期に、ちょっとホッとしてくれたり、心があたたかくなったり、切なくなったりして帰ってもらえたらうれしいです」

 尾上「師走…年の瀬って、なんだかちょっと寂しい気持ちになるじゃないですか。1年が終わっちゃうなって。もちろんそれは、次の1年の始まりでもあるんですけど。なんかその新しい1年に向けての、小さな希望じゃないですけど、そういうあったかい気持ちになれるお芝居だと思うので、それを感じてもらいに劇場へ来て欲しいなと思います」

 浅野「2チームがそれぞれしっかり関係を作って稽古してますし、クリスマスの時期に、物語自体はクリスマスにちなんではいないんですけど(笑)、そういう季節に贈る鄭さんのお芝居は、笑って感動できて、心があたたかくなって帰っていただくものになっているので、そんな二人芝居の真骨頂を、ぜひ見に来ていただきたいです」

ヒトハダ番外公演「杏仁豆腐のココロ」
2024年12月12日(木)-2024年12月22日(日)
会場:浅草九劇(東京都台東区浅草2-16-2 浅草九倶楽部 2階)
脚本・演出:鄭義信
出演:杏チーム 村岡希美・浅野雅博/仁チーム 高畑こと美・尾上寛之
ホームページ:https://hitohada-offical.bitfan.id/schedules/54911

◆鄭義信(ちょん・うぃしん)1993年に「ザ・寺山」で第38回岸田國士戯曲賞、2008年には「焼肉ドラゴン」で数々の演劇賞を総なめにした。また2022年に劇団「ヒトハダ」を立ち上げた。近年の主な作品に、舞台「パラサイト」(23年・台本・演出)、「欲望という名の電車」(24年・演出)、音楽劇「A BETTER TOMORROW -男たちの挽歌-」(24年・脚本・演出)、ヒトハダ第2回公演「旅芸人の記録」(24年・脚本・演出)

◆浅野雅博(あさの・まさひろ)1972年生まれ、神奈川県出身。文学座・ヒトハダ所属。1995年「愛の森」で初舞台。舞台、映像、CM、ナレーションなどで幅広く活動中。所属劇団以外にも、鵜山仁、栗山民也、小川絵梨子、石丸さち子ら演出の作品に数多く出演。近年の主な出演作品に、「エンジェルス・イン・アメリカ」「オイディプス王」「ロスメルスホルム」(23年)、「オセロー」「旅芸人の記録」「GOTTO 神」(24年)などがある。

◆尾上寛之(おのうえ・ひろゆき)1985 年生まれ、大阪府出身。NHK朝の連続テレビ小説「ぴあの」で子役として俳優デビュー。ドラマ「ROOKIES」ではメインキャストの一人を演じ、若手演技派俳優として注目を集める。その後もテレビ・映画・舞台とコンスタントに出演し、25年3月から上演される「きたやじ オン・ザ・ロード〜いざ、出立!!篇〜」(ウォーリー木下演出)への出演も控える。

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