昨今、そろばんを始める子どもの低年齢化が進んでいる。計算力を鍛えるそろばんは、現代の進学事情において「中学受験に有利な習い事」として注目されている。同受験における珠算式暗算(頭の中にそろばんを描いて計算する方法)を習得するメリットの一つが、問題を解く時間に余裕が生まれること。同受験に有利となるキーポイントと言える。
公益社団法人全国珠算教育連盟(本部・京都府京都市)はこのほど、東京23区のそろばん教室に通う小学生以下の子どもを持つ親348人を対象に実施した「令和のそろばん意識調査」の結果を公開した(調査期間:2024年4月9日~6月21日)。
それによると、そろばんを習い始めた時期は小学1年が43.7%と最も多かった。また、小学校入学前から始める子どもも31.6%にのぼり、それらを合計すると4人に3人(75.3%)が小学1年までに習い始めるという結果に。さらに、中学受験を予定している子どもに絞れば、そろばんの低年齢化はより顕著で、88.3%が小学1年までに習い始めていることが明らかになった。
1960年代は小学2年で「九九」を学習してから習い始めるパターンが主流。また、現在も小学3~4年時にそろばん授業があることから中高学年で習い始めるイメージが強いが、実際は低年齢化が進んでいる。
そろばんを習わせる理由は「計算能力の向上が期待できるから」(85.6%)が最多。実際に習わせた結果、「計算能力がついてきた」という回答も82.8%と8割を超えた。また「集中力アップ」は習わせる理由・メリットともに上位にランクイン。問題に一心に向き合う経験と習慣づけが、集中力アップにつながっていると考えられる。
続けて、そろばんを始めて「計算能力がついてきた」と実感している親288人のうち、子どもの算数の成績が「もともと良かった」および「無回答」を除いて追加調査。その結果、算数がもともと得意でない子の6割弱(56.9%)が「算数の成績が向上してきた」とし、さらに8割(80.6%)が「日常の買い物や会話、学校生活など、日々の生活で好影響を及ぼすようになった」と回答した。
最後に「中学受験をする予定」があるか聞いたところ、明確に「その予定」と回答したのは22.1%で、「おそらく受けさせる方向」を加えると37.1%が中学受験をする方針であることが判明。さらに「どうしようか検討しており、どちらにしようか迷っている」という層まで含めると、半数以上(55.7%)が受験意向を示している。
民間企業が行った、首都圏に住む親を対象にした中学受験等に関する調査(22年10月発表)によると、「子どもの中学受験を考えているか、それとも高校受験を考えているか」に対して、中学受験の意向は全体の21.1%だった。このデータと比較すると、そろばんを習わせる親の中学受験意識が相当に高いことがわかる。
中学受験では「算数を制する者は中学受験を制する」とされる。中学受験で算数が重要視される理由は「配点が高い」「得点の差がつきやすい」が挙げられる。得点の差がつきやすいのは、算数は他の科目に比べて全体の問題数が少ないため一問あたりの配点が大きいことに加え、大問ごとにそれぞれの問題に連動性があるためだ。
算数の得点が合否に与える影響は大きく、問題自体の難易度も上昇している昨今。複雑な問題に対応するには計算力という土台が欠かせないことから、珠算教育に再び注目が集まっている。