ザルツブルクの調理場で”奇跡”が起きたー。オーストリア人のピーター・ラマーさんは2010年にバイク事故で重傷を負い、医師からシェフの仕事は二度とできないと告げられた。だが現在、友人と開発した器具を使い、自身の店で調理場を動き回って料理している。
料理を作るだけではない。精力的に調理場を動き回っている姿も信じられない偉業だ。事故にあい、理想としたシェフの仕事は絶望的になった。6年間手術を繰り返しても、医師から立ち仕事に戻ることはできないと告げられた。それでも、ラマーさんは決して諦めることはしなかった。
「2016年は私の人生のターニングポイントだった。これ以上続けられないと思った時だった。誰もが、専門家でさえ、もう二度と立ち仕事はできないと口をそろえた。私自身も同様に感じていた。足に痛みがあったからだ」
ラマーさんは、友人の「アマチュア金属加工職人」に助けを求めた。友人のティヒさんと2人で、座面を取り付けたC字型の器具を設計。この器具がレールを滑ることで、作業台の間を自由に移動することができるようになった。
ティヒさんは「この装置でどうやって移動するかというと、天井や作業台上部に自立式レールを設置し、それに沿って器具のローラーが動く。こうして、レールの下を自由に動き回ることができる」と説明した。
驚くべき創意工夫だった。ラマ―さんは「最初の試作品が、私の人生や未来に喜びを取り戻す希望になった。ここからは上り坂しかないと分かっていた。他の人に言われたことは全て真実ではなかった。2016年からここに座って仕事を始め、既に8年が経つ。私は今、自分の店と情熱を手にしている」
ラマーさんとティヒさんは、このシステムが世界で唯一無二だと自信を持っている。必要とする人々が手頃な価格で使えるよう、特許を売却しないと決めている。両氏は現在「スタンディング・オベーション」という会社で、政府の支援も受けながら、障害を持つ人々が労働市場に復帰できるよう支援を行っているという。