伝説のスター越路吹雪が生誕100年 記念CDやイベント続々、桑田佳祐もライブでカバー 宝塚後輩に聞く

北村 泰介 北村 泰介
生誕100周年を記念して発売された8枚組CDボックス『越路吹雪avec日生劇場 1965~1969』。初CD化の超レア曲も収録
生誕100周年を記念して発売された8枚組CDボックス『越路吹雪avec日生劇場 1965~1969』。初CD化の超レア曲も収録

 戦後最大のエンターティナー、シャンソンの女王として日本の芸能史に大きな足跡を残した宝塚歌劇団出身の歌手・女優である越路吹雪(1924-80)が今年で生誕100年を迎えた。その節目を記念し、ライフワークだった日生劇場(東京・有楽町)でのリサイタル音源などを収録した8枚組CDボックス『越路吹雪avec日生劇場 1965~1969』が6月に発売された。関係者や越路をリスペクトする〝後追い世代〟の表現者に話を聞いた。(文中一部敬称略)

  今春開催された桑田佳祐のライブ「JAZZと歌謡曲とシャンソンの夕べ」神戸公演のダイジェスト映像が13日にNHKで放送されたが、同公演ではアンコールを含む全25曲中、同一歌手では唯一の複数曲となる「サン・トワ・マミー」「愛の讃歌」「ラストダンスは私に」という越路のレパートリー3曲が選ばれた。「ラストダンス~」は〝ショーケン〟こと萩原健一がカバーしたことでも知られる。世代を超えてロック系の男性ミュージシャンも魅了した。

 新譜のボックスではこうした代表曲はもちろん、65年から56歳で死去する80年まで開催され、1か月公演を毎回満席にしたという伝説の日生劇場リサイタルで披露されたレア曲が数多く収められている。

 発売元であるユニバーサルミュージックの担当者・星野広繁氏は、よろず~ニュースの取材に対して「越路さんが40代で一番脂が乗りきっていた時代のステージ。戦後の一流ジャズメンが集まったバンドとの生共演は本当にすごいです。60年代に出演したNHK紅白歌合戦の歌唱(8年分)も初CD化され、69年のパンフレット復刻版やステージ写真を集めたブックレットも収録されています」と説明した。

 解説文を執筆した越路研究の第一人者で、シャンソン歌手のソワレは「有名曲だけでなく『夢の中に君がいる』といった面白い曲も詰まっていて『ポップな越路さん』を若い人にも聴いてほしい」と語る。70年代生まれの自身は越路吹雪研究会の会長も務める。「10代から35年間、越路さんを追っかけてきました。その存在を知った時は既に亡くなられた後でしたが、もし、あと10年生きられて、ご存命の時に知ったとしたら、こんなふうに〝越路吹雪の伝道師〟にはなっていなかったと思います」と振り返る。

 12日に都内で開催された同ボックスの発売記念イベントでソワレと共演した元宝塚歌劇団宙組(08年入団、13年退団)のミュージカル女優・咲花莉帆は「宝塚の大先輩としてだけでなく、人としての魅力がすごい。憧れでしかないですね。動画を拝見し、昭和を駆け抜けたレジェンドだと実感しています」と話す。昨年12月には朗読劇「ラストダンスは私に〜岩谷時子物語〜」に出演。咲花は「ソワレさんに教えていただき、越路さんの楽曲を今年から歌わせていただいています。私は平成生まれですけど、越路さんの歴史に携わらせていただき、新たな世代につなげていきたい」と思いを明かした。   

 今後も越路生誕100周年記念プロジェクトは続く。7月24日にはコロムビアから若き日の音源を集めたベスト盤「アーリーソング・コレクション」が発売され、早稲田大学演劇博物館では「越路吹雪衣装展」が8月4日まで開催中。越路さんが亡くなった11月には、ゆかりの有楽町で愛称を冠したイベント「ブラヴォー!コーチャン」の開催が決まった。

 一連の企画に携わるソワレは「11月はポップなショーにしたい。僕も越路さんの幻の曲を入れたカバーアルバムをリリースします。大胆に見えて繊細な人。大スターだけど、ワガママでなく、周りの人にすごく気を使う人。そんな人間味あふれる魅力を伝えていきたい」と誓った。

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