“サイレントキラー”糖尿病は恐ろしい病気 深刻な合併症防ぐため早期治療を 元近鉄投手の一報に医師の思い

谷光 利昭 谷光 利昭
画像はイメージです(Orawan/stock.adobe.com)
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  プロ野球の近鉄などで活躍された佐野慈紀さんの記事を見ました。私と頭髪の状況が似ていて、“ピッカリ投法”では楽しませていただいだけに驚きました。感染症が進み、右腕を切断。ご本人のブログなどによると、糖尿病の影響とか…。今回はその恐るべき病気について述べます。

 食の欧米化、飽食の時代の中、糖尿病の患者さんは増加しています。糖尿病には、Ⅰ型とⅡ型があります。患者さんの多くがⅡ型糖尿病です。遺伝性があり、血縁関係に糖尿病の患者さんがいると高率に発症します。

 糖尿病が非常に恐れられる理由に3大合併症が挙げられます。網膜症(失明の原因に)、腎症(腎不全から透析に移行する可能性も)、神経障害(感覚障害から下肢切断の原因に繋がることも)です。それらの原因の多くが血管の損傷です。あまり知られていないかもしれませんが、糖尿病に罹患すると、心筋梗塞、脳梗塞などの血管の病気が高率に発症します。

 血管の中に高濃度のブドウ糖が入ることにより血管が痛んでくるのです。また、免疫能力に携わっている白血球である好中球が減少し、普通の人はかかりにくい感染症に簡単にかかってしまいます。新型コロナでも、糖尿病の人が感染してしまうと、地域や人種を問わず、重症化するリスクは高くなると言えるでしょう。

 歯周病などもその一つです。神経障害が高率に合併していることが多く、傷を負っていても気が付かないことがあり、歯周病から心臓の中に細菌が入り、心臓の弁に細菌が巣食い、弁が壊れてしまうことがあります。弁膜症という状態です。その細菌が巣食った壊れた弁から、全身に細菌が散らばることがあります。

 糖尿病の患者さんで下肢を切断することはよく耳にしますが、腕の切断はあまりありません。足の怪我に気が付かず、重症化して下肢の切断に繋がることは多くみられますが、手や腕は常に視野に入りますので、怪我を放置することがほとんどないからです。

 今回のように腕を切断せざるをえない原因は、弁膜症からの細菌感染が考えられます。糖尿病は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも言われる恐ろしい病気です。

 遺伝、体質などの状況により、すべてに当てはまるとは言い難いのですが、食事制限や運動療法によって発症を遅らせたり、未然に防ぐことは可能です。とにかく早期に適切な治療をすること。そのことが、失明、透析への導入、下肢切断、脳梗塞、心筋梗塞…などの深刻な合併症を防ぐ大きなカギとなります。

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