TikTokで話題のBON.井上が語った 胸が小さい〝自虐〟ネタで「豊胸やめた」女性も 29日に初公演

北村 泰介 北村 泰介
TikTokの「自虐ネタ」などで大反響を呼んだ女性アーティスト、BON.井上
TikTokの「自虐ネタ」などで大反響を呼んだ女性アーティスト、BON.井上

 短い尺の動画を作成・投稿、閲覧できる中国発のSNS「TikTok(ティックトック)」が2017年から日本でのサービス開始以来、18年頃から若者を中心にブームとなり、現在は幅広い層のユーザーに浸透している。一般層だけでなく、エンターテインメントの世界においても、このTikTokでの表現に活路を見いだした人もいる。その1人で、29日に初のワンマンライブを大阪で開催する女性アーティスト、BON.井上に話を聞いた。

 井上は兵庫県明石市出身。ダンサーだった母の影響で幼い頃からダンスを始め、自宅のある明石からダンスなどの音楽表現を学べるOSM(大阪スクールオブミュージック)高等専修学校に「片道1時間以上かけて」通学。20歳前から大阪を拠点とし、ダンサー、ボーカリスト、俳優としてミュージカルの舞台、テレビドラマ出演、振り付け師などでも活動したが、20年のコロナ禍を機にTikTokにも取り組み始めた。

 胸が小さいことなどの「自虐」ネタをはじめ、女性が公言しづらい「生理現象」、同棲生活で家事を押しつけられる女子の怒り、思春期の思い、自身が住む大阪といった様々な世界観を「替え歌」で表現したネタなど多岐にわたる。そうしたネタが持ち前の「顔芸」「ダンス」「歌唱力」「ラップ」といったプロの技で表現されていることで注目された。4月時点でフォロワー数は35万9000人以上、総再生数 1 億5000万回超と大反響を呼んでいる。

 「コロナ禍でライブできなくなった時、逆に『コロナ・チャンスや』と思ったんです。TikTokも最初のうちは〝かっこいい〟のをやってたんですけど、ウケは『まあ、そんなもんか…』という感じだった。それで友だちに見せる感覚で載せたやつが反響良くて、『ありのままに生きててよかったんやな』という自信につながった」

 限られた時間の中でいかに簡潔に表現できるか。井上の場合、現時点で最短の作品は「トイレあるある」というネタで8秒。便器に座る井上が拳を握って力んでも〝成果〟が出ずに落胆するが、「あれ?」と目を見開いた瞬間、予期せぬ〝成果〟が出たのか、一気に脱力して〝アホ顔〟になる作品が、巧みな顔芸と共に哀愁漂うギターの音色をBGMに表現されている。わずか8秒の中、生理現象に伴う感情の揺れを無言の起承転結でコンパクトに描写した。

 また、「新郎新婦が1時間58分遅刻して、司会者が残り2分で仕切る」という設定の「2分の結婚式」ネタは1分でまとめた。井上が「本当はタイトル通りに2分で撮りたかったんですけど、その時は1分までしか撮れなかったんです」と明かすように、TikTokの投稿時間は徐々に延長されている。

 井上は「最初は15秒くらいだったのが1分とか、3分とかになって、今では10分くらいできるようになってると思います」と説明。その上で「やはり、最初の5秒、8秒、15秒とかで、パッと見て面白い、見入ってしまうというところをウリにすることを考えています」と〝秒の勝負〟にこだわる。

 ネタは長いもので1分30秒前後。「私も昔は太ってました」という作品では、中学1年時に足が太くて付けられたあだな名が「ボンレスハム」で、芸名「BON」の由来はボンレスハムだ…という自己紹介も兼ねたネタを本格的なラップで展開する。また、「おなら」をテーマに、有名曲の替え歌でキレキレのダンスを披露するネタも。こうした〝大ネタ〟の一方、すっぴんで部屋着のまま自宅でK-POPを踊りまくる動画は15秒ほどで、身に覚えのある女性からのウケもいいという。

 こうした活動の集大成となる初ワンマンライブは「ツルペタ革命」と題して29日17時半から「大阪RUIDO」で開催。タイトルは「胸が小さいこと」を意味する。

 「私のTikTokを見て『豊胸(手術)しようと思っていたけどやめました』という女の子がいた。『自分のコンプレックスも前向きなものにしていったらいいんじゃないの』という意味も込めて曲も作っている。女子には『化粧しないと人前に出られない、男子の前ではこういう姿は見せられない』とか、いろいろあると思うんですけど、TikTokでバズった時にすごく思ったことの一番が『ウソなく、自分がありのままの状態』であること。そこをライブでも伝えていきたいし、歌詞もしっかり聞いていただきたいです」

 今後について、井上は「ティックトッカーとしても認知度を上げたいところはあるんですけど、私は芸人ではないし、本当のところはボーカリスト、アーティストとしてやっていきたいというのが大きい。なので、自分は何者かというのをちゃんと証明したい、定着させたいということで『歌』にはこだわっていきたい」と語る。

 TikTokは自身の道を模索する中で出会った一つの表現ツール。「ありのまま」という芯はブレずに本格的なエンターテイナーを目指していく。

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