大河『光る君へ』庚申待の日の悲劇!藤原一門に衝撃を与えたある出来事 歴史学者が語る

濱田 浩一郎 濱田 浩一郎
画像はイメージです(hiro/stock.adobe.com)
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 NHK大河ドラマ「光る君へ」第12回は「思いの果て」。庚申待の場面が描かれました。庚申待とは、干支の庚申(かのえさる)にあたる日の夜に行なう祭事のことです。本来は中国の行事でしたが、それが日本に伝わったのでした。

 庚申の日、三尸(さんし)という虫が人間の睡眠中に体内から脱け出して、天帝にその人の罪過を報告すると信じられていました(また、その虫が人間の生命を短くするものとされていました)。そこでこの悪い虫が天に昇れないようにするために、人々は集まって、一晩寝ずに、酒盛りなどをして過ごしたのです。これが庚申待です。平安時代頃には日本で行われていました。

 平安時代の歴史物語『栄花物語』にも庚申待の記述があります。天元5年(982)の正月には「庚申の日」がありました。よって、藤原道長の父・兼家の東三条邸でも庚申待が行われることになったのです。

 邸の若い女房たちが「年の始めの庚申でございます。庚申待をなさいませ」と触れ回ることで、庚申待がスタートしたとのこと。兼家の息子たち(道隆・道兼・道長)も「面白いことだ」とノリノリで参加したようです。では、彼、彼女らが夜を徹して何をしていたかというと、歌を詠んだり、碁・双六の勝負をしていたのでした。庚申待は何事もなく終わるはずでした。

 しかし、夜が明けて鶏の鳴く頃に異変が起こります。兼家の娘・超子(冷泉天皇の女御。居貞親王=後の三条天皇の母)が脇息に寄りかかったまま冷たくなっていたのです。ちなみに超子の母は時姫。道長らと同じ母のもとに生まれています。「光る君へ」では、吉田羊さん演じる詮子(兼家の娘)が注目されていますが、詮子には超子という姉がいたのです。

 さて、兼家は娘の一大事を聞き、飛んできたそうです。そして、冷たくなった娘を抱きしめ、泣いたのでした。僧侶たちの祈祷が行われましたが、何の甲斐もなく、超子は亡くなります。娘の突然の死に、兼家は日々、涙に暮れていたとのこと。超子の死は藤原氏に衝撃を与えたようで、超子の死後、兼家の一門は庚申待を行うことはなかったと言います。

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