全日本女子プロレス、アルシオンで活躍し、２００１年に頭部負傷の影響で引退した府川唯未が１２日、アルシオンの復活興行「ARSION THE FINAL ～卒業～」（新宿FACE）で１日限りの復帰を果たした。同大会に出場した長女でプロレスラー、田中きずなへレスラー魂が継承された。
同団体は全日本女子プロレスの分裂騒動を機に、現スターダム・エグゼクティブプロデューサーのロッシー小川氏が1998年２月に設立。資金繰りの悪化により2003年６月22日の後楽園大会で堀田祐美子率いる「Z-SPIRITS」に敗北を喫し、同24日に堀田が立ち上げた新団体「AtoZ」に所属選手が吸収される形で活動を休止した。創立25年が過ぎる寸前、府川が中心となって一夜限りの大会が立ち上がった。現役、ＯＧ選手が登場し、区切りの〝卒業式〟が行われた
府川は同じく限定復帰した大向美智子、藤田愛と組み、アルシオン出身で現役を続けるAKINO & Leon&山縣優組と６人タッグマッチで激突。全女でのアイドル路線を脱却し、アルシオンで得意技とした飛びつき式腕ひしぎ逆十字固め、相手の打撃を切り返す脇固め、丸め込みからの脚関節技などを繰り出した。10分時間切れドロー、全力を尽くした。
田中きずなはセミで関口翔と組み、Sareee＆チェリー組と戦ったが、Sareeeの裏投げに屈していた。それでも「お母さんは頭のケガで不本意な引退だったので、やり残したことは全て私がやる、というのを伝えたかった。負けてしまったけれど、力は全部出せたと思う。お母さんのようになれるよう頑張ります」と決意表明。開会セレモニーに登場する母の姿を目にして泣いてしまい「おかあさんが大好きだった場所に立ててうれしい」と感激を隠さなかった。メインでは母のセコンドを務め、リングイン時はロープを上げた。試合中も涙が止まらなかった。試合後はリング上で母から強く抱きしめられた。
伊藤道場、家では夫でプロレスラーの田中稔をパートナーに準備した府川。「家庭、仕事がある中では最大限練習できたかな」と納得の表情を浮かべた。田中きずなを横に「アルシオンのリングで夢のよう。１年前はデビューしていなかったのに。頑張っているよ、と周りから聞いています。私の娘ではなく、きずな選手がロープを上げてくれました」と感激を口にした。
きずなは「母はケガで引退したので、自分にプロレスをやらせたくないと言っていたのは当然ですし、それでも最終的には夢を認めてくれた。セコンドについて、時間はかかっても改めてお母さんを超えたいと思った」と決意を口にした。府川の試合を「格好良かったです。プロレスラーの姿は映像でしか知らず、家での母だったらこけちゃうんじゃないかと思っていた。レスラーの母を間近で見られてうれしかった」と語った。
府川は「うれしい」と娘の言葉を喜んだ。ロッシー小川氏からは「卒業だけで終わらず、次につながった」と母子の奮闘を賛えられた。
