年末年始の帰省シーズンがやってきた。離れて暮らす親と実家で久々に対面することになるわけだが、その場に同伴した配偶者との間で、いわゆる〝嫁姑問題〟などが勃発することも懸念される。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏が〝有事〟の場合の対応策について解説した。
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【今回のピンチ】
実家に帰省中、その場に妻がいないタイミングで、母親が「○○さんって」と妻の悪口をポロリ。たまたま聞いてしまった妻が「お義母さん、あんまりです……」と泣き出した。
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実家に帰省中、1階のリビングで母親とふたりになりました。妻は2階で荷物の整理をしています。嫁姑の関係はいちおう良好ですが、何日か一緒に過ごしたことで、母親も気になる点があったのでしょう。
「○○さんって、お箸を使うのが得意じゃないみたいね」と、ちょっとした悪口をポロリ。ところが、2階にいるはずの妻が、いつの間にか降りてきていて、ドアの向こうですべて聞いてしまったようです。
「お義母さん、そんなふうに思ってらしたなんてあんまりです……」と、妻が泣き出しました。さて、どうしたものか。
たいした悪口ではありませんが、たまたま聞こえたというシチュエーションは、ショックを増幅させます。「気にしなくていいよ」「母さんだって悪気はないんだから」と言っても慰めにはならないでしょう。
最悪なのは、都合の悪さをごまかすために「立ち聞きしてたのか!」と妻を責めたり、母親をかばって「本当なんだからしょうがないじゃないか」と言ったりすること。間違いなく夫婦間に深刻な亀裂が生じます。
ここは、母親に念入りに悪者になってもらいましょう。呆れた口調で、
「母さんは昔から、箸の使い方には過剰に厳しくてさあ。俺も1000回ぐらいは『なんて使い方してるの!』って叱られたんだよね。そこまで厳しいってことは、もしかしたら前世は箸だったのかもしれない」
話を盛りつつ、このぐらいのことを言った上で、「母さんが失礼なことを言ってごめん」と妻に頭を下げます。横にいる母親も「ごめんなさい。余計なことを言っちゃうのは、私の悪い癖ね」といった感じで謝ってくれたら、妻もそれなりに落ち着くでしょう。
母親が自分から素直に謝るタイプじゃない場合は、「母さん、さっきの言葉は○○がかわいそうだよ」と苦言を呈しましょう。母親はゴニョゴニョ言うだけで謝ろうとしなかったとしても、夫である自分は妻の味方をしたという実績を重ねることが大切です。
仕上げとして、少し時間を置いてから、妻に「母さんも反省して落ち込んでたよ。くれぐれもしっかり謝っておいてくれってさ」と伝えましょう。もちろん、でっち上げでかまいません。嘘も方便とはこのことです。
あとは後日、妻にも母親の悪口を気が済むまで語らせれば、何となく「おあいこ」という気持ちになる……かも。ドロドロした悪口が次から次へと出てきたら、それはそれでまた別の問題が発生してしまいますけど。