スターダムに21歳のニューヒロインが誕生した。シングル最強リーグ戦「5☆STAR GP 2023」を締めくくる横浜武道館大会が30日に行われ、レッドスターズ代表の鈴季すずが優勝決定戦でブルースターズ代表の舞華を下し、初優勝を飾った。14分3秒、スカイツイスター・プレスからの片エビ固めで3カウントを奪った。
感傷的な涙も、笑顔もない。堂々としたたたずまいで王冠、勝利者ガウンをまとった鈴季は両手を突き上げた。リング上で「私は両国国技館まで待てねぇよ!11月18日大阪エディオンアリーナで赤いベルトに挑戦します!」と宣言し、バックッステージでは「言っただろう。私はシングルマッチが大好物なんだよ。優勝したからには、スターダム最高峰のベルトに挑戦する価値がある女なんだよ。私はプロレス界の顔になるのが最終目標。この勢いでプロレス界の顔になっちまうからな」と言い放った。昨年に続く2度目の出場で、エースへの切符ともいえる過酷なリーグ戦の頂点に立った。狙いを中野たむが保持するワールド王座に定めた。
レッドスターズ組を12点で首位通過。12点でブルースターズ代表の舞華と、反則グーパンチの相打ちでダブルダウンする程の殺気をリングに充満させた。どの体勢からでもリフトし、たたきつけるパワー殺法と真っ向勝負。雪崩式のブレーンバスターからの連続ブレーンバスター、ラリーアートを浴びて動きが止まり、柔道仕込みの必殺技を許すも3カウントは回避。ハイキック、トラースキック、ランニングニーなど打撃技で応戦し、最後はジャーマン連発からのスカイツイスター・プレスで圧殺した。
2002年9月16日生まれ、宮崎県出身。中学卒業と同時に上京し、アイスリボンに入団した。16歳でデビューし、既にキャリア5年。エースだったジュリアがアイスリボンを去り、スターダムに主戦場を移した翌年の2020年8月、17歳でシングル王座を戴冠し、団体の顔となった。フリーとなり昨年1月からスターダムに参戦。転機は昨年6月から今年4月まで続いたデスマッチ10番勝負。男性レスラーと流血をいとわないハードコア戦で己を磨いた。昨年はフリーだったが、今年にスターダムに入団。ユニットに所属せず、一匹狼のポジションで存在感を示し続けてきた。
「デスマッチで心も体も強くなった。もうスーパーマン状態で、あとは力を出すだけ。(10番勝負最終戦の)葛西純さんとはメチャクチャ厳しい試合だったけど、試合後にとても背中を押される言葉をいただいた。その言葉は内緒ですが、一生大事にしていきたい。その前くらいから『プロレス界の顔になる』という目標が自然と出てきたんです。(9月10日の)ドリームタッグでジュリアと組んだこともターニングポイントになった。因縁のある相手だけど、何かすごく吹っ切れた」
21歳での5☆STAR制覇。団体のロッシー小川エグゼクティブプロデューサーは「中学を出てプロレスラーになって、もう十分キャリアを積んで完成している。彼女はプロレスの申し子、センスの塊。昔だったら20歳過ぎでトップに立つのは決して珍しくなかった。彼女もスターへの入り口にいる」と賛辞を送った。アイスリボン時代は寝食をともにし、現在は新日本のSTRONG女子王座を保持するジュリアは「私がいなくなったあと、17歳でトップに立ったのは本当にすごいこと。そして21歳で『プロレス界の顔になる』と言えるのもすごい。普通は誰かを超えたい、あのベルトが欲しいと言う中で、彼女は感性が違う。どこまで成長するんだろう」と敬意すらを口にした。
今や大相撲でも、多彩なバックボーンを持つ年長者がひしめく女子プロレス界でも割合が少なくなってきた中卒たたき上げ。「数々のすごい先輩たちが取ってきたのが5☆STAR。トップに立つためには絶対必要だった」とうなずきつつ「ずっとプロレスが好きで、プロレスのことだけを考え続けてきた。私は学歴も資格もない。プロレスしかできないんですよ」と覚悟を示した。「女子プロレスの全盛期を取り戻したい。私の力で取り戻したい」。そう言って、視線を未来に向けた。