岡山県には知る人ぞ知る国内外の刀剣女子の聖地がある。日本刀の生産地で有名な瀬戸内市長船地域にある「備前長船刀剣博物館」だ。人気アニメ「エヴァンゲリオン」と日本刀とのコラボで注目を集め、日本刀を男性に擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」で人気に火が付き、博物館を訪れる女子が一気に増加した。
JR赤穂線「香登(かがと)」駅から徒歩約20分、「長船(おさふね)」駅からタクシー約7分。バス停「船山(ふなやま)」停留所、「天王(てんのう)」停留所から、それぞれ徒歩約10分。日本刀を作るための工房が隣接し、刀匠、塗師、装剣金工師、研師と職人が常駐して制作。定期的に企画展を開催するなど、日本刀好きにとってはたまらない場所だ。
人気のきっかけとはなったのは2012年に開催された「エヴァンゲリオンと日本刀」の特別展。エヴァの作中からイメージした刀剣などを展示し、日本刀だけでなく、エヴァのファンも大いに来場した。以前は年間の平均来場者数が2、3万人だったが、同年度は7万人以上と最高の数字をマーク。一躍、脚光を浴びることになった。その後も年間の平均来場者数は3、4万人を維持していた。
さらに拍車をかけたのは、2020年に戦国武将の上杉謙信が愛用したとされる国宝「太刀無名一文字(山鳥毛)」を、瀬戸内市がクラウドファンディングで資金を集め、鑑定も行った結果、個人所有者から5億円で購入。当時、「刀剣乱舞」に「山鳥毛」がキャラクターとして登場したこともあって、大きな話題となった。
しかし、コロナ禍と重なり、来場者は2020年度、21年度と1万7000人台に減少。昨年度になってようやく3万人台まで回復した。なお、現在も混雑を回避する意味もあって、1時間ごとに入館できる人数を制限している。
先日、同博物館に寄ってみた。開催中の企画展は写真撮影禁止だったが、展示された日本刀の説明文を熱心にメモをする刀剣女子の姿が多くみられた。同博物館によると日本人だけでなく、海外のファンも多いという。その中でもフランス人が圧倒的。日本のアニメ、ゲームが人気の国であることが影響していると分析している。工房では半日、熱心に作業を眺めている人もいるそうだ。
「山鳥毛」の公開は11月25日から12月27日。日本刀の魅力にどっぷりつかってみるのもいいのでは。