女子プロレス・スターダムの後楽園ホール大会が9日に行われ、極悪軍団の大江戸隊を率いる刀羅ナツコがダンプ松本への思いを吐露した。出場中のシングルリーグ戦「5☆STAR GP」では現在6勝2敗の勝ち点12。レッドスターズブロックのトップを独走中だ。8・19大田区総合体育館大会で共闘したレジェンドヒールから得た刺激を、リングで存分に発揮している。
プロレス人生の貴重な経験となった。ダンプ松本、ZAP、琉悪夏と組み、井上京子&天咲光由&林下詩美との8人タッグ戦。極悪同盟とともに凶器、毒霧、反則とヒールの本領を発揮して快勝した。
「リラックスして笑顔だったのに、入場曲が流れた瞬間、ダンプ松本の顔に変わり、オーラがすごかった。試合では天咲光由が泣きそうな顔をしていたよな。あんな顔、私らに一度も見せたことがない。それほどの恐怖だったんだろうな」
ダンプとは初遭遇。さすがのナツコも初対面の際は緊張したのだという。だが、柔和な笑顔で緊張を解こうとするレジェンドヒールを前にして、ヒールの魂が共鳴した。極悪同盟のTシャツ、顔面シールを施され、悪の団結力は一層強まった。
ナツコは2019年に花月率いる大江戸隊入りし、ヒールとして始動。翌年に花月が引退を表明したこと機に、自らがリーダーに立った。「前のリーダーのイメージが強すぎた。前の方が良かった、とかいろいろ言われたよ。ずっとモヤモヤしていた」。そんな頃、1980年代の全女全盛期、極悪同盟で大暴れしたダンプ松本に意識が向いた。過去の映像、記事を集めた。チケットを購入し、こっそりとダンプが出場する試合を観戦した。「ヒールに転向する際に遺書を書いた、と知って、自分も書いたんだ。遺書を書いたら少しスッキリした。全て吹っ切れたわけじゃないけど、前に進めた気がした」と、感謝の気持ちを抱く。
共闘の翌日の8・20沼津大会で岩谷麻優を撃破。8・26名古屋大会では中野たむを下し、8・27敦賀大会ではなつぽいに初黒星を付けた。〝赤いベルト〟ワールド王者のたむとは、10・9愛知大会での王座挑戦を決めた。難敵を次々に撃破し、勢いは増す一方だ。
「(ダンプは)一瞬で迫力を全身にまとって、そのオーラは試合中に一度も崩れることがなかった。その貫禄を私も身につけたい。目標のため手段を選ばず勝ちに行くのはこれからも変わらないけどね。それとあの試合から『もうダメだ』と諦めることがなくなった。これからも続けたいよね」
「5☆STAR GP」制覇へ向け、ブロック戦で残すは最終日9・30横浜大会の葉月戦。かつて大江戸隊で行動をともにし、19年末には葉月の引退試合の相手を務めた。葉月は現役に復帰し、現在は敵対する関係。ファン投票で選出された9・10横浜大会でタッグを結成することも注目を集めるが、視線は一騎打ちに向いている。
「戻って来た時は『なんだコイツは』という気持ちもあったけど、もうそんな小さな気持ちはない。今は一番勝ちたい相手、葉月と戦えるのがうれしい」と腕をぶした。
この日は吏南、フキゲンです★を引き連れ、岩谷麻優&コグマ&向後桃組との6人タッグ戦に出場。ボディープレス、セントーンなど重量感あふれる攻撃を繰り広げたが7分49秒、岩谷がスタンディング・ドラゴン・スリーパーホールドで吏南を絞殺。試合には敗れたが、これで気落ちするナツコではない。
ダンプからは試合後にエールを寄せられた。全女時代、カミソリ入りの手紙、自宅への投石、会場でたたかれるなどの嫌がらせを受けた。ただ、最近のSNSを通じた誹謗中傷を心配されたという。実際に、ナツコにも誹謗中傷のDMが届くことがある。「自分のようなヒールを目指してくれるのはうれしいけれど、それだけ心に負担がかかる。でも負けないで頑張ってほしい」。ダンプの言葉を胸に、目的のため極悪の限りを尽くす。