岸田文雄首相の側近・木原誠二官房副長官の妻が、元夫の死をめぐり警視庁から任意聴取を受けていたとする週刊文春の報道に関し、27日発売の同誌に登場した警視庁捜査一課の元捜査員、佐藤誠氏(64)が28日、都内の週刊文春発行元・文藝春秋で記者会見を行った。
同誌は2006年に都内の自宅で遺体で見つかり、当初自殺とみられていた男性の事件が2018年に再捜査が始まったものの、その後中止になったことを報道。木原氏が圧力をかけた疑惑を報じている。佐藤氏は木原氏の妻に事情聴取を行った警視庁捜査一課の元刑事で、誌上で再捜査が中止になった経緯について証言した。
佐藤氏は、警察庁の露木康浩長官が13日の定例会見で「事件性はない」と述べたことに触れ「そんなウソ言ってる、とカチンと来た。被害者に対して、火に油を注ぐような風に見えてきた。被害者がかわいそうだ。頭きちゃって。どうせやるなら、全部話すしかないと思った」と、義憤に駆られての告発だったとした。
続けて「私は取調官だったので、証拠品だとか供述だとか全部私の方に集中する。正式な発表では、証拠品をもとにとか、適正な捜査で証拠品をもとにしたら自殺だと。結局そんな証拠品は存在しないんですよ。存在しないと断言します。事件なんです、あれは」と語気を強めた。
佐藤氏は「ヤバいことなのかもしれないけど、何が目的とかじゃなくて、ここで言うしかねぇとそう思っちゃった」と、覚悟の上だったとした。「実際証拠がないんですから。自殺と認定する証拠が。誰が見てもあれを見て事件性がないという警察官はいない。大塚署がミスっちゃったのかな」と繰り返した。
再捜査が始まりながら、上司の管理官から取り調べの終了を突然告げられという佐藤氏は「ちょっと終わり方が異常だった。ふつうの終わり方じゃない。今まで殺し(殺人事件)100件近くやっているけど、こんな終わり方はない」と振り返った。
佐藤氏は「殺人事件は、ホシ(犯人)を捕まえることも大切だけど、一番大事なのは遺族班、被害者班なんですよ。捜査を終了するには被害者に結果を伝えないといけない。それがない」と、警察の対応に疑問を投げかけた。「自殺を認定する遺書とか、見た人とかもいない。そんなもの、遺族が納得するわけないじゃないですか。もうちょっと、被害者のことを考えてもらいたいという気持ち」と表情を固くした。
木原氏は同日、松野博一官房長官に「私が捜査に圧力を加えたとの指摘は事実無根」と伝えた。木原氏の妻も、一連の報道について日本弁護士連合会に人権救済を申し立てている。