トニーは1926年8月3日に、ニューヨーク市のクイーンズ区でイタリア移民の両親のもと誕生。父親は青果商、母親は裁縫師の貧しい家庭で育ち、子供の頃から歌を歌い始め、音楽の他、工業芸術高校では終生の趣味となる絵画も学んでいた。1944年18歳で徴兵され、第2次世界大戦中、ヨーロッパの戦区で歩兵として闘い、ドイツの強制収容所の解放に従事した。
その後、演劇関係の教育機関アメリカン・シアター・ウィングで声楽をミリアム・スピアーに師事。アーサー・ゴッドフリーのタレントスカウト番組への出演がブレイクのきっかけとなった。
その後、歌手のパール・ベイリーに雇われパフォーマンスに参加した一方、コメディアンのボブ・ホープがそのパフォーマンスを見て、ニューヨークのパラマウント劇場での自身のショーにトニーを出演させることとなる。
またマーティン・スコセッシ監督の1990年のギャング映画『グッドフェローズ』ではトニーの1953年の『貧者から富者へ』のパフォーマンスが使用されていた。
妻スーザン・ベネディット、息子2人と娘2人そして孫9人を残して旅立ったトニーに多くの著名人が追悼の言葉を寄せており、2011年のトニーのアルバム『デュエッツ2』で共演したマライア・キャリーはツイッターに「安らかに。トニー・ベネット。世界で最も愛され、尊敬された伝説のシンガーの1人と仕事ができたことは名誉でした。あなたの不在を寂しく思います」と、エルトン・ジョンはインスタグラムに「トニーが亡くなったことを知りとても悲しい。疑いなく一流のシンガー、人間、パフォーマーだった。かけがえのない人だった。僕は彼を愛し憧れていたよ。スーザン、(息子の)ダニー、そして家族たちにお悔やみを」と、ビリー・ジョエルは、「ジャズからポップへ移行した時代の唯一無二の声の持ち主」と称賛、一緒に仕事ができた喜びと共に、自分が出会った中で最高の人間の1人だったと言葉を寄せた。