「モフケツ」とは、もふもふした動物のお尻のことである。「果汁美」とは、果汁のように爽やかで美しい様子を表現した言葉だ。
近年、SNSの普及と共に膨大な数の造語が使われるようになったが、これらの言葉は、どのような瞬間に、なぜ生まれるのか。「SNSことば辞典」を運営する明円卓さん、大竹さん、新居さんにお話を聞いた。
ーーアカウントを始めたきっかけは?
明円さん:3年前に会社から独立したんです。僕はコピーライターなのですが、自分の言語感覚が会社を離れてどんどん古くなってしまうんじゃないかと心配で、新しいプロジェクトを作りました。毎日SNSでは新しい言葉たちが生まれて、なんとなく目にしてはいるんですけど、まとめないと自分の言葉として、語彙として定着しないのかなと。その時に1番ネット言葉に接触してるメンバーと一緒に作るのがより良いのでは、と思って、中の人は現役の大学生である大竹さんと、新居さんにお願いしました。
ーー昔のネット用語は、2ちゃんねるとか、なんJ語とか、いわゆるオタクが作っていたイメージですが。
明円さん:昔からギャルとかどんどん言葉を生み出してたんですよ。ただ、広く色々な人たちが発信する社会になったのが最近というだけ。昔も色々な場所で本当は新しい言葉が生まれてたのが、SNSなどで顕在化するようになったというだけだと思います。
ーーどうして新しい言葉が生まれるのでしょうか?
明円さん:SNSのコメント文化、コメントに対する評価の軸が新しい言葉が生まれるモチベ―ションのひとつになっていると思います。コメントに対して、いいねを押されることで広まっている。一番楽に参加できる大喜利ということですね。
ーーこれはうまいこと言ったな!という印象的な言葉は何でしょう。
明円さん:私が得に好きなのは「wifi切りながら視聴しました」とか。自分の好きな動画を無料で見るのは失礼にあたるのでは!という意味です。他は、YYYY/MM/DDという生年月日を記入する欄のことを「ヤマダ」って言ったり。
大竹さん:私は「建国できる」とか。ビジュアルが王子様みたいな、プリンセスみたいな人に対して、ファンが多すぎて国ができちゃうよ!という意味です。
新居さん:私は「きよい」という言葉が好きです。韓国語では「キヨウォ」が、かわいいっていう意味なんです。語感は日本語に当てはめるとキモイに近いんですけど、かわいい、という意味とのギャップがおもしろいなと。
ーー新しい言葉に対して、批判的な人もいますよね。日本語の文化が、とか。
明円さん:私は「全然いいじゃん!」て感じです。辞書だって、毎年編集されて新しい言葉や意味が追加されてるんですよ。新しい言葉は、どんどん増え続けていくと思います。
ーーこれからの展望は?
明円さん:書籍化できればいいなと夢見ています。辞書みたいな。流行語大賞とかにはならない、取り上げられないけど、SNSで生まれている言葉を溜めていければいいなと思ってます。僕が広告代理店出身なので、新しい言葉の辞書としてみんながここを参照してくれるようになれば。日本の広告業界から新しいものを生み続けていくヒントになるのでは、と思っています。
ーーすごい。誰かが趣味でやっているのかと思ってました……。
明円さん:うちの会社の事業なんですよ!お金を1円も生み出していない事業です。回収はできないので、ボランティアみたいなものですね。アイデアの会社のSDGSみたいなものです(笑)。
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SNSが存在しなかった頃のインターネットでは、リア充、wktk、自宅警備員などのネットスラングが、限られた場所で、仲間かどうかを判別する合言葉のように使われていた。現在もSNSで目まぐるしく新しい言葉が生まれているが、それらの言葉は沢山の人の目に留まるよう望み生まれている。いつか国語辞典に入るかもしれない。100年後の日本語はどうなっているだろうか。
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